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妖精の女王
八年前、全てを失ったシェイトを引き取ったのはクリスだった。

『このまま魔力に喰われるのを待つか、僕と共に来て“力”を手に入れるか、君はどちらを選ぶ?』

朱と蒼のオッドアイの青年はそう言ってシェイトに手を差し伸べた。
そしてシェイトはその手を取った。後悔はしていない。自分を鍛え、育ててくれたクリスには感謝している。

『ふぅん。初めまして。私はクラウディア、妖精の女王よ』

クラウ、クラウディアはくるんと一回転すると優雅に自己紹介をした。
クラウディアは、愛らしい外見と言動からは想像もつかないが妖精族を纏める古の精霊、妖精の女王なのだ。
それこそ人の召喚に応えるなど異例中の異例。精霊学者たちが見れば狂喜乱舞する事間違いない。

「お初に御目にかかります。シェイト・オークスと申します」

相手が妖精の女王と言う事でシェイトも彼女に倣い、丁寧に頭を下げる。

「まあ、クラウは女王には見えないけどね」

『まったく、失礼ね』

とは言いつつも本気で怒って居る様子では無い。寧ろそんな状況を楽しんでいる節がある。
クラウはまたも一回転すると一四、五歳ぐらいだった彼女の姿が、少しだけ大人びた容姿に変化していた。
抜けるような薄緑の衣と、鎧を合わせた不思議な衣装を身に纏う彼女はまさに妖精の女王に相応しい。

「それじゃあクラウ、頼むよ」

クリスの意図を察した彼女は微笑み、首肯する。
ふわり、とシェイトを包むように光の粒子が顕現した。まるで蛍火のように淡い光は、吸い込まれるようにシェイトの中へ消えていく。

「これは……」

失った体力が回復していく。他人の体のように重かった体も今は軽い。古の妖精の力、今は癒しの力として具現化しているが、転化すれば破壊の力とする事も可能だ。勿論、彼女は望まないだろうが。



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