かしましい妖精
「ならいいけどね」
仕方ないなぁ、と言った表情でクリスは苦笑する。ふと思い付いた彼は精霊の詩を紡ぎ出す。
『我が術と力をもって此処に願う。開け、幻界への門。汝、我が喚び声に応えよ……』
詠唱破棄。彼ほどの魔術師になると簡単な魔術なら詠唱を破棄して行使する事が可能だ。
まあ、何が簡単かは、クリスの思考と一般論との間には深い断絶があるだろうが。
クリスの導きと共に、虚空に小さな金色の魔法陣が描き出される。光が弾けると同時に現れたのは輝く透明の翅を持つ小さな妖精。
光の帯のように拡がる金の髪に、それ自体が宝石であるような常盤色の瞳。ちょうど掌に乗りそうな大きさで少女の姿をしている。
「やあ、クラウ」
妖精――クラウと言うらしいに、のほほんと挨拶するクリス。
『ちょっとクリス、何の用なの?』
クラウは愛らしい顔に憤慨の表情を張り付けている。どうやらかなりご立腹のようだ。
『所でこの子誰?』
一瞬で表情を変化させたクラウは、興味津々とシェイトの周りを飛び回る。
クラウが飛ぶ事に光の軌跡が描き出され幻想的だ。
「あぁ、そう言えば君には紹介してなかったね。僕の息子だよ」
衝撃の一言にクラウは口を開いたまま、呆然と固まっている。
『……む、息子ぉ!?』
「うん。義理の、だけどね」
『それを先に言えーッ!』
保健室にクラウの絶叫が響き渡った事は言うまでもない。
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