力の代償
シェイト・オークスは唐突に目を覚ました。と同時に目に入ったのは真っ白な天井。
そして理解した。自分は倒れたのだと。軽い眩暈を覚えつつ起き上がった彼の前にアリアの姿が目に入った。
どうやら寝てしまったらしく、ベッドに突っ伏し小さな寝息を立てている。
辺りを見回すと、自分達以外の姿はない。太陽の位置からして倒れてから然程時間は経っていないようだ。
至福の表情で眠る彼女を起こすのは忍びなく、どうしたものかと思案したその時、
「倒れたって聞いたけど、大事ないみたいだね」
シェイトが寝ているベッドの直ぐ傍にクリスが立っていた。気配などは全く無かった。少なくとも彼が知る限りでは。
「少しふら付いただけだから」
そう言って立ち上がろうとしたシェイトだが、やんわりとクリスに止められた。
「今、動くとアリア君が起きちゃうよ。あとシェイトに頼まれてた物出来たから」
とクリスが手渡したのはサファイアのピアスだった。この間の一件で壊れた代わりである。
クリスは魔術師としては勿論、魔具を造る魔具師としての才能も並外れている。
こうして手に取っただけで前の物よりも大分制御能力が上がっている事が分かった。サファイアの中に封じ込めらた魔法陣が効果を増幅させているのだろう。
「ありがとう」
クリスに礼を言い早速付けてみた。すっと波が引くように不快感が消えてゆく。気分も先程と比べ楽になった。
「シェイト、前も言ったと思うけど無理は禁物だよ。君の魔力は只でさえ不安定なんだから」
クリスは嗜めては居たが、彼の言い様には子供を諭すような柔らかさがあった。それはゆっくりとシェイトの中に染み渡る。
「分かってる、それは俺が一番よく分かってるよ」
クリスに言ってはいたが、その言葉はシェイト自身に向けられているように見えた。
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