[携帯モード] [URL送信]
やる気の行方
「アリアちゃんたちは今頃、街にいるんだろうな。……俺もそっち行った方が良かったかも」

「おい、レヴィ。さっきまでのやる気はどこ行った」

 あーあー、と両手を上げたレヴィウスはふてくされているよう。アリアたちが買い物に行くと聞き、自分たちはシオンに稽古をつけて貰う、ということになったのだが、このザマである。提案したのはシェイトだったが、彼も乗り気だったのだ。こんな機会は滅多にないからと喜んでいた数十分前のレヴィウスはどこに行ったのだろう。
 以前、アスタロトの契約者に連れ去られた時、自分たちはクリスの足手まとい同然だった。あんな事が早々あるとは思わないし、あっても困るのだが、もう少し何か出来たら、と思ったのである。せめて足手まといにならないように。兎に角、何かしたかったのだ。

「……とっくの昔にフェードアウトしたな」

「いくらなんでも早すぎないか……?」

「俺、努力してる姿は誰かに見せない主義だから」

「偉そうに言われても」

 胸を張って言うレヴィウスを見ていると、笑みがこみ上げて来た。彼らしいと言えば彼らしい。レヴィウスが影で努力しているのは知っている。彼は努力している姿を他人に見せることを嫌う。シェイト相手にだってそうなのだから、意地っ張りというかなんというか。いや、微笑ましいと言えばいいだろうか。そんな彼を好ましいと思うし、何より自慢の親友なのだ。

「おう。そんな元気があるならまだやれるな。ウチの弟子どもと試合するか?」

「……え?」

「……勘弁して下さい」

 弾かれたように顔を上げると、いつの間にか前に佇んでいたシオンが爽やかな笑みを浮かべているではないか。思わず聞き返してしまったが、隣のレヴィウスが項垂れているため、聞き間違いではないだろう。少し休憩をして、随分体も楽になったが、余力など初めからない。おまけにシオンの弟子となれば、皆かなりの武芸者なはず。

「シオンさん。ご冗談はその辺りにして下さい。先輩方、完全に固まってますよ」

「ははは。冗談だ、冗談。ラティの息子はからかいがいがあるな」

 フィアナの母も恐ろしいと聞いたが、シオンも十分恐ろしい。マリウスが少しばかり呆れた声で言うと、シオンは声を上げて笑った。まるで子供のように無邪気で、豪快な笑みに怒る気も起きない。いつまでも子供心を失わない面白い人なのだろう。

「……笑えないです」



[*前へ][次へ#]

14/29ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!