恋の話
「アリアさんはオークス先輩がお好きなんですわよね?」
「……私ってそんなに分かりやすい、フィア?」
興奮気味のシャルロッテに押される形で、フィアナの方を向く。もしかしなくても自分はかなり分かりやすいのだろうか。すると直ぐ様、うん、と返される。シェイトに対する思いを言葉にすることはまだ出来ない。惹かれているのは認めよう。だってそうだろう。自分を気にかけてくれ、優しくしてくれる彼に惹かれるな、という方が無理だ。
けれど、それが恋かは分からなかった。
「シャ、シャルロッテだって、レヴィウス先輩が好きなんでしょう?」
「……はい。お慕いしております」
「うわー……堂々と言っちゃったよ、この子」
苦し紛れの言葉だったが、頬を染め、恥じらうように顔を背けるシャルロッテは大変かわいらしい。フィアナは感心しており、ノルンは呆気に取られていた。彼女もレヴィウスには学園祭の時に会っているから、彼がセレスタイン家の跡取りだと知っているだろう。アリアははっきりと言ってのける彼女が羨ましかった。自分は己の感情さえ分からないのに。
「シャルロッテさんは凄いですね。わたしは認めることが怖い。ただ、兄に甘えるようにクロトに甘えているだけで……違うんじゃないかって」
「そうでしょうか? お兄様に抱く気持ちと恋は違いますわ。その方を思うと胸が痛くて、苦しくなりませんか? もしその方が貴女に向ける笑顔を他の女性に向けてたとしても、お兄様なら何も感じないはずです」
ラケシスが眼帯を押さえながら自嘲気味に笑う。眼帯に隠されたそこには何があるのだろう。片方の瞳と同じトパーズを思わせる瞳か、それとも暗い眼窩か。シャルロッテはまるで母が子を諭すように笑いかける。兄に向ける感情と異性に向ける感情は明らかに違う。
「答えは出ましたか?」
「……はい。簡単なことだったんですね」
「簡単なこと……」
アリアだけではなく、フィアナもノルンもシャルロッテの言葉を噛み締めるように俯いている。一転して幸せそうに笑うラケシスを見ていると、こちらもつい顔が綻ぶ。沈黙が続く中、ウェイトレスが飲み物とケーキを運んでくれた。
「折角だし、食べませんか?」
「そ、そうね」
我に返ったノルンも頷いて居住まいを正す。恋の話がしたくて彼女を探していた訳ではないのに、シャルロッテのお陰でいつの間にやら恋の話である。慣れない話は神経を使う。緊張する必要なんてない。それなのにシェイトを思うと、胸がざわついて仕方がなかった。
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