良かったのか、悪かったのか
シャルロッテとフィアナを紹介した後、アリアたちはカフェにいた。ちなみにテラス席である。まだ肌寒さはあるが、天気も良いし、何より今日はあたたかい。カフェは雑誌や新聞を読んでいる客や談笑している女性たち、家族連れなど結構な客で賑わっていた。
ラケシスはノルンのルームメイトで、やはり悪魔祓い見習いだという。以前と比べ、ノルンの雰囲気が柔らかな感じがするのは、彼女のお陰なのだろうか。二人も気分転換に買い物に来ていたらしい。飲み物とケーキを頼んで暫くした後、アリアはずっと尋ねたかったことを口にした。
「あの、ノルンさん。シグフェルズさんは大丈夫ですか? 聖人の方がシグフェルズさんだって聞いて驚いて」
「……学園祭から色々あって、シグが聖人だって分かったの。私もシグが聖人って分かった時は驚いたわ。それが良かったのか、悪かったのか、今も分からないけど。今は落ち着いているから大丈夫」
大丈夫だと言っているのに、ノルンの表情は晴れない。レヴィウスが言っていたことを思い出す。聖人は人柱に等しい。聖人は皆から崇められる存在ではあるが、命尽きるまで悪魔と戦い続けることを宿命づけられる。聖人の力に目覚めということは、つまりそういうことだ。
良かったのか、悪かったのか。それは紛れもない彼女の本音なのだろう。同じ力を持つ者として苦楽を分かち合うことは出来るが、引き返すことが出来ない。選択肢は一つしかないのだ。彼に同じ十字架を背負って欲しくない。そう思ったのだろうか。
「ノルンさん……」
「あの、一つ質問なのですが、そのシグフェルズさんは、どうして今まで聖人の資質があると分からなかったのですか? 見習いとなる者は初めに適正検査を受けるとお聞きしましたが……」
「あ、学園と同じなんだ。うーん……確かになんでだろうね」
《学園》に入学出来る者は、魔力を持ち、精霊因子を視る目を持つ者だけ。生徒となる者は入学に当たり、まず適正検査を受ける。潜在魔力量や親和性の高い属性など。それは教戒でも同じ。悪魔を祓うための武器――バクルスを操るには聖気が必要となる。それは人であれば皆が持つものだが、個人によって差があるのだ。
そもそも聖人とは、常人に比べて内包する聖気が尋常ではない者を指す。見習いとなるに当たって、学園のように魔力量や聖気の量も調べられるはず。それなのに、シグフェルズは聖人であると分からなかった。何か理由があるのではないか。シャルロッテはそう言いたいのだろう。
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