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恐怖の……
昼下がりの空は鮮やかに澄みわたっていた。七月も中頃に入ったが、それほど暑くもなく丁度よい暖かさだ。

「で、どうしてこんな天気の良い日に私は何してるんだろうね……あ、雲がウサギの形してるよー」

フィアナ・クルスラーは、自室の机に突っ伏して呟いた。

「こら! 現実逃避しないっ!」

「おーい。フィア、大丈夫? 生きてる?」

彼女の横で呆れたような表情を浮かべているのは親友アリア・ハイウェル、心配気にフィアナを気遣う少年は、幼なじみのマリウス・ラーグだ。

「そ・れ・はフィアが解答欄を間違えて書いたからね」

うっ。言い返せない。事実その通りである。先の事件もあり学園は一足早い夏期休暇に入っていた。

約一週間前に起こった魔獣の襲撃と魔術による火災については、無用な混乱を避けるため、結界装置の故障と魔術暴走が原因であると言う説明が学園長からなされた。あれ程の魔術にも関わらず、怪我人は出たが、幸い死者は出なかった。

「折角の夏休みなのに……」
寮生活を送る生徒たちの多くは終業式を終え、既に帰郷の途についていた。

何故フィアナが机に突っ伏し、現実逃避をしているのかというとそれは一重に補習のせいと言えるだろう。

元々成績の方は芳しく無く実技でカバーしていたフィアナだが、夏休み前に行われたペーパーテストで解答欄を間違う大失態(彼女にとっては)を侵してしまったのだ。お陰で見事赤点を頂いたフィアナは恐怖の補習を受ける事に。そして成績の良いアリアとマリウスに教えを乞い現在に至る、という訳である。



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あきゅろす。
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