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アルジュナの特権
 カルナシオンは家族だ。兄であり、時には父である。そう分かっていても、人の姿を取った彼を見ると緊張している自分がいた。何も変わらない。竜だろうと人だろうと、カルナシオンはカルナシオンなのに。

 こうやって一緒に眠るのは何年ぶりだろう。早く起きなければいけないのは分かっていたのに、少しだけ思う。呼ばなければ良かった、と。
 カルナシオンの綺麗な瞳の中に自分が映っている。そう思うと、何だか恥ずかしい。アルジュナを見たカルナシオンが破顔した。おはよう、と優しく髪を撫でる。

 カルナシオンは殆ど笑わない。人の姿でも。勿体ないと思うが、それと同じくらい嬉しいのだ。この笑顔を見ることを許されていることが。ただ、一つ気になるのは、

「ねえ、カル。今日はどうしたの?」

 いつもなら、頑なに部屋を出て行く彼だ。同じベッドで寝た記憶があるのは初めの一、二年だけ。
 歌を歌って貰った所までしか記憶がないし、目覚めれば抱き締められていた。普段の彼なら絶対にしない行動。頼んでも駄目だと断るのに、何があったのだろう。不思議そうに尋ねれば、カルナシオンは困ったように笑う。

「お前が離してくれなかったんだ。袖を握ったまま」

 無理に離すのは気が引けたから、と彼は言う。顔から火が出そうだった。意識していなかったが、そんなに寂しかったのだろうか。カルナシオンの袖を無意識に掴むほど。
 恥ずかしい上に、これでは呆れられてしまう。俯いてまま謝ると、

「ご、ごめん……」

「今日だけな」

 一人で青くなったり、赤くなったりする彼女を見るカルナシオンの瞳は、驚くほど優しい。
 竜は人間より体温が低いが、それが心地よい。ひんやり、ではないが、冷たい方だろう。
 もう少しこのままでいたかったが、今日も仕事だ。離れたくない。心はそう言っていたが、きっとぬくもりが恋しいから。そう言い聞かせて。

「起きるか?」

「うん。用意して行かないと」

 カルナシオンの手を借りて起き上がる。すると、彼はいつものように小さな竜の姿に戻ると、先に行く、と言って部屋を出た。アルジュナが話し掛ける暇もない。やはり彼は彼だ。
 クローゼットから服を取り出して着替えると、髪をとかした。いつものように纏めて髪飾りをつけて微笑む。一日はまだ始まったばかり。

「……今日も頑張ろう」



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あきゅろす。
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