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不思議な少年
 オスカーの指示は的確で、瞬く間に店内は片付けられた。騒ぎを起こした男たちは端っこに転がされている。勿論、眠り続けたままだ。先程とは打って変わって静かになった冒険者たちは、それぞれの席へと戻って行く。
 諍いをおさめたカルナシオンはと言えば、カウンターの隅で体を丸めていた。ただし、眠ってはいないらしい。

 オスカーに誰が男たちを眠らせたのか聞かれたが、アルジュナは笑うしかなかった。あの青年が彼だと言えば、またややこしいことになるだろうし、カルナシオンも嫌がる。よって誰でしょうね、と月並みな返事をすることしか出来ない。

 静かになったとは言え、先ほどのカルナシオンの鮮やかな手際に、冒険者たちは未だ興奮は冷めやらぬよう。謎の青年について様々な憶測が飛び交っている。人の姿をした竜を見破ることはほぼ不可能。
 外見は確かに際立っているが、それ以外は人間と殆ど違いはないのだから。まさかあの青年の正体が、カウンターの端で丸くなっている小さな竜とは誰も気づかないだろう。

「アルジュナ、これ一番テーブルにな」

「はい」

 オスカーから受け取った飲み物をトレイに乗せ、指定されたテーブルに運ぶ。飲み物はギルドでは珍しいレモネードだった。大体、ギルドを訪れたものは酒類か水、もしくはお茶の類を頼む。成人した者しか入れない上に、殆ど酒しか頼まないからだ。
 テーブルに向かうと、そこには一人の少年が座っていた。ややアルジュナよりも年下に見えるかもしれない。ただ、ギルドは成人しか出入り出来ないため、彼も十五歳以上なのだろうが。

 切り揃えられた髪は鮮やかな鴇色で、顔立ちだけを見れば少女と間違えられるかもしれない。アーモンド型の瞳は見事なカナリヤイエロー。
 首にはベルト型のチョーカーと、服にも同じようなベルトと鎖がつけられており、薄紅色と黒を基調としている。耳には鎖がついた十字のピアスが煌めいていた。袖口と首元からは白いレースが覗く。恐らくはこの少年も冒険者なのだろう。

 しかし、彼は見る限り、武器を携えていないように見える。もっとも隠し持てるものなら分からないが。整った顔立ちをした愛らしい少年。だと言うように、彼は只者ではない……ような気がしてならない。浮世離れした空気は勿論、ふとした仕草が他の冒険者とは違う。
 だが、この少年がどんな人物であっても仕事とは関係ない。気を取りなおして微笑む。

「お待たせしました。レモネードです」



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あきゅろす。
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