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バレバレです
 裏山を出たルフィナたちは少女と共にラントへと戻ってきた。問題はこれからどうするか。ルフィナは運良く夫妻に引き取られたが、彼女も同じようになるとはとても思わない。何よりもアスベルの父、アストンが許さないだろう。もし、彼女の記憶が戻らず、家族も現われなければどうなるのだろうか。王都に連れて行かれるのかもしれない。
 記憶を失っているからか、彼女は少しも不安げな表情を見せなかった。まるで親鳥に従う雛のように自分達の後ろをついてくる。これからどうするか、考えていたその時だ。

「あっ! アスベル!」

「げ、シェリアだ」

 随分ご立腹の様子で歩いてきたのは、一人残してきたシェリア。腰に両手を当て、アスベルを睨みつける彼女はかなり怒っているに違いない。何せ、黙って裏山に行ったのだ。そういえば、いつか裏山へ行く時は一緒に、とアスベルが約束していなかっただろうか。

「アスベル。なんで私の事置いてちゃうのよ! どうせルフィナにだって何も言わずに連れていったんでしょ!?」

「兄さん、どうしよう。シェリア、怒ってるよ」

「やっぱり、黙って行ったのが悪かったんだよ」

 どうやら、彼女の怒りはアスベル一人に向いているよう。何故なら、ヒューバートもルフィナも彼に連れ出されるばかりだからだ。やはりシェリアに一言残して行った方が良かったのではないか。すると、それまで黙っていたアスベルが一言、逃げよう、と。
 彼の行動は早かった。瞬く間にシェリアから逃れる。その動きは素早いとしか言えず、ルフィナでさえ呆気に取られたほどだ。

「こら、逃げるな! 今行くからそこにいて! 動いちゃだめよ!」

「おい、大丈夫か!?」

「シェリア!」

 アスベルを追いかけて走りだそうとした彼女だが、胸を抑えて苦悶の表情を浮かべて立ち止まる。荒い息を繰り返すシェリアは顔色も悪く、とても苦しそうだ。
 ルフィナは彼女の背中を擦り、少しでも楽になるようにと祈ることしか出来ない。あの力は自由に使える訳ではないし、ここでは誰が見ているのか分からないのだ。暫く深呼吸をすると落ち着いたようで、顔色も先ほどより幾分かましになっている。

「どう? 少し楽になった?」

「……ありがとう、ルフィナ。あなたたち、あそこへ行ったんでしょう」

「あ、あそこって?」

「とぼけないで。裏山にある一年中花の咲いている場所よ。行く時は私も一緒にってあれほど約束したのに……」

 どうにか誤魔化そうとしているが、どうやらシェリアには通じないようだ。自分たちは外から来たのだから、ラントを出たのはまず間違いない。そう考えれば、行き先が裏山だと推測するのはそれほど難しいことではないのだろう。



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