銀の星が光る時
分解された愛銃
「ねえ、その魔導器、見せてくれない?」
とリタが言い出したのは宿屋の一室、ちょうどエリシアがクレスケンスルーナのメンテナンスをしていた時だ。そう言えば初めて会った時もリタは銃に興味を示していた気がする。
「いいけど、どうしたの?」
「こんな型、あんまり見たことないから。作りなら兵装魔導器に近いけど、消費するエアルは少ないみたいだし、どっちかって言ったらソーサラーリングに近いのよね……でもソーサラーリングと違って純粋なエアルじゃないし……」
小型な部類に入る魔導器にしては複雑な術式が刻まれている。ソーサラーリングのようにエアルを圧縮して撃ち出す所は同じだが、魔導器を介して扱う技や簡易魔術に近いと言えるだろう。
魔導器研究家であるリタでも銃の形をした魔導器は滅多にお目にかかったことがない。
「エリシア、この子どこで手に入れたの?」
「ええっと、父さんがギルド関係者だって話したよね? そのツテかな……ってもう分解してるし!」
リタにしか分からない専門用語を何気なく聞いているうちにリタは愛銃を手早く分解して魔核と筺体に分けている。
嗚呼、私のクレスケンスルーナが……別に分解するのはいいのだが、せめて一言断わって欲しいんだけど。
「ん、ああ、ごめん……」
一応謝ってくれるが、視線は銃に向いたままで多分、エリシアの話なんて聞いちゃいない。もうこうなったら止められないのだ。リタの気の済むまでクレスケンスルーナはあのままだろう。
結局、リタが銃を離してくれたのはそれから小一時間後のことである。リタいわく、
「今度じっくり調べさせてもらうから。まだ分からない所多いし、術式を解析してみないと……」
だそうだ。その先は専門用語を連発されたのでエリシアは適当に頷いておいた。魔導器に関してはリタに逆らわない方が賢明である。
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