銀の星が光る時
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ほんの半年前の自分はまさか、こんな事になろうとは思いもしなかった。まさかユーリたちとこの世界、テルカリュミレースを旅することになろうとは。いや、トリップなるものが本当に起こるとは夢にも思っていなかったのだから。
ゲームで見たものとは全てが違う。帝国と魔導器の庇護のもとに人は生きているし、生命を脅かす魔物など今も恐ろしくてたまらない。
彼らの鋭い牙や爪にかかれば人間は簡単に死ぬのだ。
「あのう、リュカ? そろそろ離してくれませんか?」
「駄目! だってエステルを抱きしめてると安心するんだもん」
そう、私リュカは只今、エステルを絶賛独り占め中なのです。戸惑う彼女に構わずリュカはエステルを抱きしめ、ふわふわな薄紅色の髪を撫でる。
だがエステルの方も困っているようだが、嫌ではないらしい。
「ちょっとリュカ。あんたいつまでエステルにしがみついてるつもりよ! まともに戦えないんだから警戒くらいしなさいよ!!」
呆れたように、あるいは少し怒ったような顔で注意をするのはリタ。今は夜営の準備の真っ最中である。魔物に襲われる危険も零ではない。
ただでさえリュカは一般人にして平凡な少女である。
平和な日本では道を歩いていて魔物に襲われることなんてあるはずがないし、例え野宿をしてもそう悲惨なことにはならない。
だがテルカリュミレースでは違うのだ。
ユーリやエステルのように剣の心得がある訳もなく、カロルやジュディスのような斧や槍など持ったこともない。
唯一、弓道をかじったことはあったが、和弓だし、何より動いている魔物を狙うなんてもっての他だ。
「リタってば可愛い。やきもち焼いてるの? ああ、もう駄目。リタっち可愛い過ぎる……!」
「馬鹿何すんのよ! そんなことより真面目に魔術の修業でもしなさいって!」
リュカはエステルに代わり今度はリタを抱きしめる。顔を赤くしてまくし立てる少女が可愛いくて、思わずほお擦りまでしてしまう始末だ。
そう、リュカは戦えない。
だが自分の身を守る力くらい持ちたいのと、やはり皆の力になりたいという思いからリタに魔術を学んでいた。
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