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の星が光る時
A
「まあまあ、魔導器はこんなこと出来ないけど」

彼女が魔導器を大切に思っていることは知っている。それも普通の人間が抱く感情と少し違うことも。
リタは魔導器をまるで生きている人間のように扱う。

そう言いつつもイシュトヴァーンの手は未だリタの手を握っている。それがリタには恥ずかしいのか、半ば照れ隠しのように叫んだ。

「あ、あんたみたいなクリティア族、見た事ないわ!」

クリティア族は基本、学者肌でマイペース。少なくてもジュディスやイシュトヴァーンのように戦うこともしないし、旅に出ることもない。
飄々と掴み所のない彼はまるでジュディスが二人いるような感覚に囚われる。

「それは光栄なことで。褒め言葉と受け取っていいのかね?」

薄い笑みを浮かべたイシュトヴァーンは文句ないくらい格好良い。だがそれがリタには気に入らない。リタはイシュトヴァーンの言葉には答えず、無言で拳を振り上げた。
しかしリタの拳はかすりもしなかった。これがカロルなら思い切り当たっているだろうが、やはり同じようには行かない。

「なんで避けるのよ!」

「当然。当たったら痛いから」

さも当たり前と言った風に答えるイシュトヴァーンに更に腹が立って来る。
イシュトヴァーンはからかっているつもりなのだろう。当人はどうか知らないが、リタはそう思っている。

「……からかわないで!」

イシュトヴァーンの表情が笑顔からきょとんとした顔になる。まるで何を言われているのか理解出来ていないように。

「オレはからかってるつもりはない。一言でも言ったか? からかってるって」

「そ、それは……」

リタは思わず言葉に詰まる。イシュトヴァーンは一度としてそんな事は言わなかった。俯くリタにイシュトヴァーンは真剣な声音で言った。

「オレはいつでも本気。それじゃあ、先に戻るから。おやすみ、リタ」

近付いて来る青年の顔に思わず目を瞑る。そんなリタを好ましく思いながら、イシュトヴァーンは彼女の額に唇を落とした。

リタは青年が去った後も中々動けず、直立不動で硬直していた。恥ずかしいのとよく分からない感情に何とも言えない微妙な気分になる。
リタはそれをはらすべく、夜の海に向けて思い切り叫んだ。

「あんのバカぁ!!」



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あきゅろす。
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