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約の翼
行動は慎重に
「何にしても、悪魔の正体については慎重に探らないとね。村の人たちに危険が及ぶのは避けたいし。もし邪視だとしても、石化の症状が出ている人は皆同じ場所にいた訳じゃない。まだ分からないことが多いね」

「完全に石化していないってことは、それほど強い力の持ち主じゃない?」

 聖職者の青年によると、不審な者や悪魔らしき姿を見た村人たちは今のところないようだ。下手に動けば村人たちを危険に晒す。今の状況は村全体を人質に取られているのと同意義だからだ。悪魔を刺激する動きは出来るだけ避けた方がいいだろうが、正体を探らなければ対処のしようがない。
 もし、悪魔がサリエルと同じ邪視の持ち主だとしても、幾つか謎は残る。そもそも邪視とは見たものに不幸や呪いを与える能力だ。石化の症状が出ている者は年齢も性別もまちまちで、全員が同じ場所にいた訳ではない。しかし、結構な時間が経過しているにも関わらず、まだ完全に石となった者はいなかった。それほど強い力は持っていないかもしれない。

「どうだろうな。わざと力を隠してるのかも、だろ?」

「……より長く楽しむため、ですか?」

「かもね。悪魔は性根が悪いヤツが多いから」

 完全に石と化した者がいなくても、それは悪魔が楽しんでいるからかもしれないのだ。彼らが持つ力は人と比べものにならない。彼らには人の命を奪うことは造作もないのだから。悪魔にとって児戯に等しいのだろう。徐々に対象の命を奪う咎の烙印と言い、人間が足掻き、苦しむさまを見て楽しむという、悪趣味極まりない。
 シグフェルズの兄――アルドとベリアルの契約を解消したベリトのような悪魔は例外なのである。

「まあ、でもオレたちの力で進行を遅らせることは出来るかもしれないね。ただし、お年寄りや子供たちを除いて」

「悪魔の力と反発するからですか?」

「ああ。抵抗力が低いから、でしょう」

 聖人の力を持ってしても、悪魔の力を完全に浄化することは出来ない。強すぎる薬が毒となるように。
 だが、浄化することは出来なくても、進行を遅らせることくらいは出来るかもしれない。ただし、子供や老人はリスクを考えると良い方法でとは言えなかった。悪魔と聖人の力。間逆のそれは体内で反発を起すだろう。悪魔の方はそれほど強い力ではないが、それでも老人や子供には害となる。相談の上、それにはノルンとハロルドが当たることとなった。



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あきゅろす。
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