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約の翼
幼なじみ
「やっぱり……」

「「青です」ね」

ノルンとラケシスが同時に指したのは、青いマフラーだった。無地でシンプルなものだが、クロトにはそちらの方が合うだろう。
深い青色は夜の海を思わせる。二人が考えることは同じだったらしい。

「ノルンさんもそう思いました?」

「爺臭いクロトにはいいんじゃない?」

嬉しそうに笑うラケシスに、冗談混じりに返すノルン。クロトは十七歳にしては妙に達観しているし、冷めたところがある。ノルン以上に、だ。
それは彼が持つとされる力に関係しているのだろうが、そんなクロトもラケシスが絡めば平静ではいられないらしい。

「ク、クロトはその……ちょっと人より大人びてるだけです! 決しておじいちゃんとかじゃなくて……!」

「はいはい、冗談よ、冗談。そんなにムキにならなくても。ラケシスは本当にクロトが好きだなって思っただけ」

慌ててクロトをフォローするラケシスだが、いまいちフォローしきれていない辺りが彼女らしい。
ノルンが思わず噴き出しそうになりながら言うと、ラケシスは彫像のように固まっていた。
見る間に頬が赤く染まり、林檎のように赤くなる。これにはノルンも驚いていた。まさかそんなに動揺するとは思わなかったからだ。

「ちちち、違います……! ええっと、違う訳じゃないですけど、クロトはその、大切な幼なじみであって……」

「分かった……! 分かったから、落ち着いて」

いくらなんでも焦りすぎだ。しどろもどろになり、完全に周りが見えていないラケシスは、自分でも何を言っているのか分からないのだろう。
ノルンが彼女の肩を掴み、落ち着いてと何度も声を掛ける。するとラケシスも落ち着いて来たのか、途端に申し訳なさそうな表情になった。

「ノ、ノルンさん。すみません!」

「謝らなくていいから。からかったのは私だし……。まさかこんなに動揺するとは思わなかったけど」

「本当にすみません。わたしとクロトはお馴染みというより兄妹のように育ったんです。だから……そんな風に考えたことなくて」

クロトが何故悪魔祓いを目指しているのか、ノルンは知らなかった。聞いたこともない。けれど、ラケシスが関係しているのではないか。
確かに二人の間に流れる空気は単なるお馴染みではない。かと言って兄妹でもないだろうが。



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