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約の翼
守ってみせる
「貴女の決意は分かりました。ですが、それを決めるのは私ではありません」

「え?」

ミシェルから返ってきたのは、予想外の言葉だった。ハロルドもルーファスも彼の命を受けている。だからノルンもミシェルに許可を求めに来たのだが。

「私は貴女に行くなとは強制しません。ノルンさんが決めたことなら。それについて決めるのは私ではなく、“彼”ですから」

含みのあるミシェルの言葉にノルンが首を傾げた瞬間、感じた気配に振り返る。憂いを帯びた表情でノルンを見つめていたのは、他でもないシグフェルズだった。

「シグ……」

昨日倒れたばかりだというのに、その危なげない足取りに違和感を感じながらも、ノルンはシグフェルズを見つめた。

「僕はノルンを巻き込みたくない。危険な目に合わせたくないんだ。だから……」

「だからあの時も一人でベリアルの元に行った。でも私は待ってるだけなんて嫌。嫌なの。シグが何て言っても私は行くから」

シグフェルズがアルドに化けたベリアルの元に行った時、ノルンは気が気ではなかった。あの時のような思いをするのは嫌だ。
無茶を言っている自覚はある。けれどこれだけは譲れない。

ノルンはシグフェルズから視線を逸らすことなく、じっと紅茶色の瞳を見据える。そうすることで自分の思いを伝えるように。

「生きて戻れるかも分からないのに……?」

「なら尚更。無理矢理にでも引っ張って帰るから」

自分でも分からない。でも、このままシグフェルズを行かせたくなかった。こうして目の前にいるのに、消えてしまいそうな不安に襲われる。
だから一緒に行って、何がなんでもシグフェルズを連れて帰るのだ。

「ノルン……。でも僕は……」

「私を信じて。それとも信じられない?」

「違う。違うんだ。けど……」

信じられない、との一言にシグフェルズは俯き、首を振る。ノルンを信じられない訳ではないのだ。
彼女が強いことはシグフェルズも理解している。だが大切だから傷つけたくない、危険な目に合わせたくない。

「私だってシグを守りたい。守ってみせる」

ちっぽけなノルンの力では、シグフェルズを守ることなど出来ないかもしれない。けれど守りたいと思う。己の全てを賭けて。それがノルンに“世界”を教えてくれたシグフェルズのために出来ることだから。



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