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約の翼
ラグナ・バーンスタイン
集合場所は正門前。ラケシスに後を頼んだノルンは正門へと向かった。
多くのアルトナ教徒たちに混じって見えた琥珀色の髪。
まだ待ち合わせの時間より十五分ほど早いというのに、シグフェルズは律儀に待っていた。服装はノルンと同じ、黒い聖衣姿である。

「おはよう、ノルン」

「おはよう」

満面の笑みで挨拶するシグフェルズにノルンも笑みを返す。ややぎこちないものの、彼女にしては上出来だろう。ハロルドとアルノルドはまだ来ていないらしい。するとどこかで聞いた声に二人は振り返る。

「待たせたな、二人とも」

そこにいたのは二人の青年だった。声を発したのは黄金色の髪に月長石の耳飾りをつけた青年らしい。
歳の頃は二十歳前後か。街を歩けば誰もが振り返るほどの美貌の持ち主だったが、何故か周囲に埋没している。

日の光を浴びて輝く稲穂を思わせる黄金の髪に、左の瞳は光が射した湖底のような金緑。
秀麗な顔の右半分を白いペルソナで隠しており、覗いているのは琥珀色の瞳だけだ。

「少し準備に手間取ってしまってね」

と微笑んだのはもう一人の青年である。
年齢は二十代半ばから後半ほどだろうが、彼が纏う雰囲気は妙に落ち着いていた。
長い金茶色の髪を後ろで縛り、ノンフレームの眼鏡をかけている。宝石よりもずっと美しい翡翠色の瞳に優しげな美貌は見る者をはっとさせる力があるのではないか。

「げ……」

「ノルア様だ」

思わず彼の呼び名を呼ぼうとしたノルンは黄金色の髪の青年に遮られる。
普段の印象が強いためすぐに分からなかったが、彼は間違いなく教皇アルノルド・ヴィオンである。

「では貴方は……」

「この姿の時はラグナ、って呼んでね」

言いかけたシグフェルズに青年はそれまでの静かな雰囲気を一瞬で捨てて気さくに答えた。
二人の知る人物でこんな事をいう人間は一人しかいない。

「ハロルド」

「ハロルドさん」

「ご名答。でも今のオレはラグナね。そこんとこよろしく」

ハロルド、もといラグナはしーと人差し指を唇に当てて微笑んだ。彼こそ異端審問官にして悪魔祓いであるハロルドのもう一つの姿、ラグナ・バーンスタインである。



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あきゅろす。
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