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約の翼
ミシェルとラファエルの頼み
「御呼び立てして申し訳ありません」

シグフェルズ、ハロルドと共にノルンは大聖堂を訪れていた。人払いは済ませているのか、人の姿はない。
出迎えたのは勿論、ミシェルである。そして彼の隣にはもう一人、見慣れぬ人物がいた。

歳の頃はハロルドより僅かに上。二十代前半ほどだろう。優しげな、麗しい顔立ちをした美しい青年である。
煌めく青銀色の髪を緩く三つ編みにして左肩に流しており、影を作るほどに長い睫毛の下にはサファイアブルーの瞳が輝いていた。

肌はミシェル同様、抜けるように白く、血管すら透けて見えそうだ。自分たちやハロルドと同じ、黒の聖衣を纏っているが、明らかに装飾が違う。
使われている生地も違うだろうし、銀糸の刺繍は豪華で彼が高位の聖職者だと窺い知ることが出来る。

「そちらのお二人は初めまして、ですね。私はラファエルと言います」

癒しの天使の名を冠する青年は、柔らかく微笑んだ。ノルンとシグフェルズはそんな彼に対し、深々と頭を下げた。聖職者で彼の名を知らない者はいない。それが例え見習いであってもだ。

「お初にお目にかかります、枢機卿閣下。シグフェルズ・アーゼンハイトと申します。後ろは同じく悪魔祓い見習い、ノルン・アルレーゼです」

シグフェルズに合わせてノルンも再び、無言で頭を下げる。目の前の青年はラファエル・セラフ・アーデルハイト。教皇につぐ地位を持つ枢機卿の一人である。

「顔を上げてください。あなた方に頼みたいことというのは猊下に関することなのです。そうですよね、ミシェル様?」

ラファエルの口から出た猊下という一言に、ノルンは内心、首を傾げた。アルノルド付きのミシェルだけでなく、枢機卿のラファエルまで直接姿を現したとなると、それ相応の“頼み”なのかもしれない。

ハロルドはともかく、見習いである自分たちを呼んだ理由までは分からないが。
いくら自分とシグフェルズが悪魔祓いに近いと言われても、自分たちは正式な悪魔祓いではないのだから。

「ええ。他でもないあなた方を呼んだのは猊下の護衛をして頂きたいからです」

「護衛、ですか?」

無礼だということも忘れ、ノルンは思わず聞き返していた。教皇と言えど、当代最強と謳われる悪魔祓いであるアルノルドに本来なら護衛は必要ない。まあ、建前もあるためそういう訳にも行かないのだが。



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あきゅろす。
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