誓約の翼
馴れ合いなどいらない
「……分かった。反対しようにも真っ当な理由だし。ただし、アーゼンハイト、足手まといになるなら私は遠慮なく切り捨てる。それで構わない?」
例えそうだとしても馴れ合いなどいらない。人の領域(なか)に入りたくないし、自分の領域(なか)にも入ってこないで欲しい。
だって他人なんて誰も信じられないから。必要以上の干渉をしないで。ノルンはそう言い含めたつもりだった。
「心配しなくても足手まといにならないから大丈夫。君は僕なんか気にしないで」
だがそんなノルンの含みに気付かず、ふわりと笑う始末だ。初めてシグフェルズを見た時に感じた影はなんだったのか。確かに自分と同じ“影”を纏っていたのに、微笑む彼からは一切読み取ることが出来ない。
「……そうする。で、ハロルド、今日から早速あるんでしょう?」
「ま、そうなんだけど、いきなり実戦ってワケにも行かないでしょ。ってことで今日は二人で組み手をしてもらう。ペアを組む相手の実力を知らないじゃいくら何でも駄目でしょ?」
自身もノルンちゃん、シグ君と呼んでいるくらいだ、ハロルドと呼び捨てにされた事を気にもしていない。
ノルンはシグフェルズの力を知らないし、シグフェルズもノルンの力を知らない。お互いの実力を把握していなければ、上手くいくものも上手くいかないだろう。
「そうですね。僕もアルレーゼさんの実力、知りませんから」
それはそうだ。ノルンは滅多に実技に出席しないし、したとしても力を抑えている。つまりシグフェルズはそう言う意味で実力を知らないと言ったのだろう。
「移動しましょう。視線、気になってしょうがないから」
先程からかなり見られていることにノルンは気付いていた。まあ、ハロルドは中身はアレだが見目だけは良いし、シグフェルズもその容姿と穏やかな性格から普段、人に囲まれていることが多い。
大方一人でいる事が多い自分がシグフェルズや、正式な悪魔祓いと共にいるのが珍しいのだろう。
「おっけー、おっけー。早速行こうか」
どこに行くのかと思いきや、ハロルドはそのまま大聖堂へと入って行く。てっきり組み手は訓練場でやるのだと思っていたようだが、どうやら違うらしい。
大体まだ祈りの時間でもないのに。だがここで突っ立っている訳にもいかずにノルンは仕方なく、ハロルドの後に続いた。
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