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約の翼
特別授業の理由
 特別訓練を終えたノルンはシャワーを浴び、大聖堂へと向かった。時刻は三時を少し過ぎた所。
 既にハロルドもシグフェルズも待っており、だがノルンは急ぐ様子もなく、緩やかな足取りで歩いていった。

「揃ったね。それじゃ、詳しい説明なんだけど、君たち二人は見習いの中でも頭一つ飛び抜けてる。そこで実戦に近い“特別授業”を受けて貰いたい。既にノルンちゃんはやってると思うんだけど、今日からシグ君と一緒に受けてもらうよ」

 聖人であるノルンは教戒に引き取られてから様々なことを教えられた。
 力の扱い方、バクルスや魔術の使い方。生来の才能も相まって彼女は苦もなくその全てを身につけたのだ。

 つまりノルンの今の力は他の悪魔祓い見習いと比べて頭一つ以上飛び抜けている。
だからこそ下級とは言え悪魔との実戦もこなしてきた。
 なのに今になって何故、シグフェルズと組まなければならないのだ。他人のフォローなどしたくもない。一人で十分だ。これまでもそうしてきたように。

「どうして? 理由を言ってくれなければ私は納得出来ない。……まあ、しようがしまいが私に拒否する権利なんて無いだろうけど」

 自嘲気味に笑うノルンは吐き捨てるように最後の一言を呟いた。
 他人と馴れ合う気なんてさらさらない。そんな茶番に付き合うためにここにいる訳ではないのだ。

 その一方で、では何のためにここにいる? そう嘲笑する自分もいる。
 どうせ何を言っても無駄なのだ。愚かな子供、ただの操り人形のくせに。

「そりゃあね、正式な悪魔祓いになったからと言っていつも一人で行動する訳じゃない。むしろ魔に近しいものと相対するには危険だ。つまり人外の相手をするには、連携は大事ってコト。悪魔と違ってオレたちには体は一つしかないんだからね。教皇猊下からのご指示だよ」

 いくら悪魔祓いが対悪魔戦に特化しているとは言え、所詮は生身の人間。強大な力を持つ悪魔を一人で相手にするには聖人で無ければ難しい。

 そのため、悪魔祓いたちは二人一組、ペアで行動する場合が多いのだ。しかし二人の息が合っていなければそれは命の危険に繋がる。
 ノルンとシグフェルズが組まされることになったのは、その予行練習のようなものなのだ。



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