金の満月が昇る時 聖核の行方 「中核……! そうか! 分かったわ。聖核よ。あれ使えばうまくいくわ。つまり、エアルを安定係数が変化し続けていってもそれを結びつけ……」 「まてまてまて、どうせ理解できないから説明はパスな」 中核、という一言にリタは何か閃いたのだろう。突然、声を上げたかと思うと、彼女の口から出たのは専門用語のオンパレードである。このまま放っておくと、十中八九止まらない。そう思ったユーリは思わず彼女を遮った。興奮するのは分かるが、専門用語を連発されても何が何だか分からない。 彼の声でリタも我に返ったらしい。こほん、と咳払いをして仲間達の方を振り返った。 「ま、まぁいいわ。とにかく、ドンに渡した聖核があったはずよね?」 「……ベリウスの聖核、蒼穹の水玉ね」 リタがエアルを制御できる方法を見つけたことをカロルとレイヴンは知らない。 何が何だか全く分からない二人は首を傾げて顔を見合わせる。そんなカロルたちを見かねて、エステルがかいつまんで事情を説明してくれた。 「リタがエアルを制御する方法を見つけたんです」 「ほんとに!? すごい!」 「ドンが亡くなった後、蒼穹の水玉がどうなったか知ってるか?」 カロルは無言、レイヴンもさあなぁと頭を掻いている。蒼穹の水玉はベリウスの最後の願いでドンへと渡された。ドンの死後、聖核がどこに行ったのか、エリシアも知らない。 アレクセイの謀反にザウデ不落宮の出現と、これまでは正直、それどころではなかったからだ。 「父さんか……」 「ハリーもどうかの? ドンの孫なら知っとるんじゃないのか?」 「ちょうどいいわ。やっこさん連れ戻すつもりだったんだ。ユニオン本部行っててよ。すぐ戻るからさ」 レオンか、あるいはハリーも知っているかもしれない。ドンの孫である彼なら。レイヴンの言葉を受け、エリシアたちは一足先にユニオン本部に向かう。 ハリーの方は彼に任しておけば問題ない。伊達に長く天を射る矢の幹部をしている訳ではないのだ。ハリーを説得するにしても、彼が適任である。 それからしばらくして、ユニオン本部まで辿り着いたまではよかったのだが、何故だが騒がしい。妙な雰囲気と言えばいいだろうか。ぎすぎすしているというか、とにかく何かがおかしい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |