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の満月が昇る時
力の関係
「ザウデを調べて色んなことが分かったんだけど、そこで使われてた技術を応用したらいけるかもって。ただ……」

「それがエステルやエリシアの……満月の子の力と関係してる、ということかしら?」

 ザウデと満月の子には深い繋がりがあった。古の満月の子らは、人の指導者であったらしい。彼らはその責任を取って己の命とザウデを使い、世界を結界で包み込んだと言う。
 だからこそ、ザウデには様々な手がかりが残されていたのだろう。

「エアルに干渉して自在に術式の組み換えを行う必要がある……。エリシアとエステルにしかできないことなの」

「私たちにしか……。あ、でもリタ。“私”の力で満月の子の力を抑えることは出来ないのかな?」

「……正直、エリシアの力は分からないことが多いわ。城でも一度調べたけど。けど、何にせよ、満月の子の力とエリシアの力は結びついてる。抑制術式を解除してみないとどうも出来ないわ」

 満月の子の力はエアルに干渉して、術式を組み換えるもの。だからこそエアルを大いに乱すのだが、アレクセイの言葉によるど、“クレセント”の力は違うらしい。この力が同胞の、満月の子の暴走を抑えられるのなら、どうにかならないのだろうか。
 ただ、満月の子は勿論、クレセントの力についての文献は無いに等しい。例えその力が何かのきっかけになるとしても、詳しく調べ、実際に見てみなければ何も分からない。リタによると満月の子の力とは違い、クレセントの力はエアルに干渉して術式を組み換えるわけではないという。
 しかし、本来、満月の子とクレセントの力は二つで一つ。抑制されているのは満月の子の力だけでなく、もう一つの力もそうなのだ。ならば、抑制術式を解除してみなければどうにもならない。

「つまり……上手くいけばエアルは制御できるが、下手すりゃエアルはより乱れて世界は星喰みのものになる。そういうことか」

「大胆な計画ね」

「大胆というか血迷ったかって言われそうだけど……」

 成功すればもう、力を使うのに命を削ることはない。何のリスクもなしに力を使うことが出来る。しかし、失敗すれば、待っているのは破滅である。これ以上、エアルが乱れてしまえば世界は終わりだ。
 全く危機感が感じられないジュディスの一言に、エリシアも苦笑して頬を掻く。大胆を通り越して血迷ったと言われそうな計画だ。失敗すれば、より破滅が近くなるだろう。失うものが大きすぎる。

「状況を打破する考えは浅瀬のミズクラゲよりも、常に大胆なものなのじゃ」

「……いや……よくわかんないけど、まあ、ともかく。きっとうまくいく。だから二人共。あたしを信じて力を貸して」

「……勿論、私はリタを信じてるから」

 またもよく分からない例えを出すパティは放っておき、リタは真剣な表情でエリシアとエステルを見た。エリシアの答えは、はじめから決まっている。疑う理由なんて何もない。リタに任せれば大丈夫。淀みなく答える彼女に対し、エステルは無言だった。



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あきゅろす。
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