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の満月が昇る時
もう大丈夫
「今日はリタの大好きなコロッケなんだけど……」

「ま、まあ、纏めも一通り終わったし、そろそろ夕飯ね」

「はいはい」

「……あんた、大丈夫なの?」

 エリシアは笑いながら、やや投げやり気味に返事をすると、昼間片付けたテーブルに皿を置いた。流石は研究者である彼女の家は乱雑と言っていい。片付けても片付けてもきりがないのだ。テーブルの周りだけはどうにか片付けることが出来たのだが。
 コロッケを口に運びながら、リタがおずおずと尋ねる。レイヴンと言い、彼女と言い、心配を掛けてばかりで申し訳なく思う。リタを安心させるようにふわりと微笑んだ。

「うん、大丈夫。ごめんね、心配かけて」

「……あたしの前でくらい、無理しなくていいのに」

「リタ……。本当は凄く不安だった。あんなに探したのにユーリは見つからなくて、生きてるって信じてるのに、信じたいのに……心のどこかでそれを否定する自分が嫌だったの」

「エリシア、あんた……」

 心配させたいわけではないのに。リタは俯き、ぽつりと呟いた。普段の彼女ならそれこそ、別に心配なんかしてないわよ、と返ってくるはず。自分を不甲斐ないと思う反面、そう言ってくれることが嬉しかった。
 笑いながら、泣きそうになって俯く。生きていると信じているのに、信じたいのに心の中でそれを否定する自分がいる。だから父はアスピオに送り出したのだ。同年代の少女がそばにいる方がいい、と。

「あ、でも、もう大丈夫。ユーリを待つって決めたから。いつまでも悩んでなんていられないでしょ?」

「……そっちの方がエリシアらしいわ、本当に」

 エリシアは本来、明るい少女である。悩み続けるのは性に合わない。それよりも彼を待つ方がずっといい。今度こそ晴れやかに笑う彼女に、リタは驚いた顔になり、やがて困ったように笑った。



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