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の満月が昇る時
ギルドの誇り
「何でもない。でも護衛なら他のギルドに頼めばいいんじゃない? 蒼き獣とか。後は……暁の雲に獅子の咆哮とか」

 他のギルドの護衛を引き受けるギルドは、エリシアの父が率いる獅子の咆哮を始めとして、蒼き獣や暁の雲などがある。
 特に獅子の咆哮は護衛を専門としており、五大ギルドではないが、それに匹敵する知名度を誇るのだ。

「そーそ。そんなに護衛が欲しいなら、騎士にでも頼んでくれ」

「冗談は止めてよね。私は帝国の市民権を捨てたギルドの人間よ? 自分で生きるって決めて帝国から飛び出したのに今さら助けてくれはないでしょ。当然、騎士団だってギルドの護衛なんてしないわ。他のギルドに頼みたくても通れないんだから意味ないわ」

 そもそもギルドとは帝国のやり方に反発する自治組織である。騎士団や評議会の腐敗、人々を省みない政治に不満を持つ者は多く、そんな彼等は帝国の市民権を捨て、帝国の関与を受けないダングレストを始めとした街を作り上げた。
 彼等の街は帝国の中にありながらも治外法権であり、帝国の法は一切通じない。彼等は帝国からの自由を得た代わりに与えられるべき全てを捨てたのだ。

「へえ、自分で決めたことにはちゃんと筋を通すんだな」

 言うユーリの顔は微かに驚きの入り混じった笑みを見せた。
 ギルドの連中もそれほど悪い者たちではないらしい。少なくてもちゃんと筋を通す人物はユーリは嫌いではない。

「そのくらいの根性がなきゃギルドなんてやってらんないわ」

 確かにそうかもしれない。ギルドの首領をやっていくとなれば中途半端では無理だ。相応の覚悟と責任、根性がいる。
 父も笑いながらよく言っていたから。エリシアはそこで始めてカウフマンに好印象を持った。

「なら、その根性で平原の主も何とかしてくれ」

「ここから西、クオイの森に行きなさい。その森を抜ければ平原の向こうに出られるわ」

 クオイの森。ザーフィアスとハルルを結ぶ深い森。確かにそこなら砦を通ることなく、北に抜けられる。
 エリシアが旅の途中、小耳に挟んだ話では霊が出るとか、呪われているやの普通なら係わり合いになりたくない噂ばかり。
 正直な所、魔物よりも幽霊の方がよっぽど怖い。出来れば通りたくないのだが、見上げたユーリの顔は不敵な笑みに彩られていた。



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