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の満月が昇る時
カウフマンの提案
 その時、一行の耳に魔物が門に体当たりするけたたましい音と地響きが届いた。カウフマンは苦笑しつつ肩を竦めて見せる。

「私、今、困ってるのよ。この地響きの元凶のせいで」

「あんま想像したくねえけど、これって魔物の仕業なのか?」

 その間にも地響きは未だ鳴り止むことなく、大地を揺らしている。
 もしそれが魔物の仕業だというのなら、正に人の手に負えるものではないだろう。

「ええ、平原の主のね」

「どこか別の道から、平原を越えられませんか? 先を急いでるんです」

 今まで黙っていたエステルが遂に痺れをきらせて口を挟んだ。
 彼女にしてみれば一刻も早くフレンの後を追いたいということだろうが、それが出来ればカウフマンとて既に砦にはいないだろう。

「さあ? 平原の主が去るのを待つしかないんじゃない?」

 エステルだけは気付いていないが、そう言う彼女には何か含みがある。フレンがハルルにいる場合、ここで足止めを食うのはあまりよろしくない。
 だが焦ってもどうにかなる事態ではないことも確かだ。そこでエリシアは諭すようにエステルに言う。

「エステル、焦っても仕方ない。まずは落ち着いて」

「待ってなんていられません。わたし、他の人にも聞いてきます!」

 しかしエステルは言うないなや走り去って行った。
 おすわりの体勢だったラピードがユーリに目配せした後、長い尻尾をたなびかせて彼女を追う。
 エリシアも彼女のことは気になったが、ユーリを放って行くことも出来ず、結局留まることにした。ラピードもついているなら心配ないだろうと踏んだからである。

「流通まで取り仕切ってるのに別の道、ほんとに知らないの?」

 ユーリの問いは暗に何か知っているだろうとの確認でもある。エリシアもまたカウフマンは絶対に何かを知っていると確信していた。
 世界の流通を一手に引き受ける“幸福の市場”の情報網は伊達ではない。でなければ世界の流通を取り仕切ることなど出来はしないのだ。

「主さえ去れば、あなたを雇って強行突破って作戦があるけど、協力する気は……なさそうね」

「おい、エリィ、何て顔してんだよ」



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あきゅろす。
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