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の満月が昇る時
世界の仕組み
「エステルよりはマシ……だと思うけど?」

「でも結界の外って、狂暴な魔物が沢山いて、こんなに危険だったんですね。ここに結界魔導器を設置出来ないんでしょうか?」

 マシで一旦考えた辺り、エリシアにも自覚があるのだろう。ならば尚更自覚のないエステルよりも始末が悪い。ユーリも人に言えたことではないが、彼女も相当なお節介らしい。
 そこへ一仕事終えたラピードが帰って来てちょこんとユーリの横に行儀よく座った。
 魔導器、取り分け結界魔導器は数ある魔導器の中でも、特に値がはるものである。人々が生活している街でもない限り、帝国は一砦にわざわざ取り付けようとはしないだろう。

「そりゃ、無理だろ。結界は貴重品だ」

「例えあったとしても帝国は、設置はしてくれないでしょう? いつだって一部の人間だけが恩恵にあやかり、弱き者は虐げられる。それが今の世界の“仕組み”だから」

 その仕組みを作ったのはこの世界唯一の国、紛れもない帝国。腐敗しきった騎士団や評議会などあてにならない。
 帝国には自由も平等もない。だから父は帝国を捨て、騎士を辞め、ギルドを作ったのだと。
 エリシアだって帝国の全てを否定している訳ではない。ただ彼等の中にはどうしようもなく救いようのない人間がいるのも事実だ。
 語るエリシアはユーリが見ても、どこか冷めたというか達観したような顔をしていた。

「魔導器を生み出した古代グライオス文明の技術が甦ればいいのに……」

 古代グライオス文明。千年以上も前、エアルの存在を発見したクリティア族は魔導器を発明した。現在使われている魔導器の殆どがこの時代のものであると言われている。
 それに加え、現在の技術と知識では筐体は別だが、魔核の生産は困難であり、発掘に頼るしかない現状だ。刹那、立ち上がった三人の前に槍を手にした騎士が近付いて来た。

「そこの三人、少し話を聞かせてもらいたい」



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