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の満月が昇る時
外敵を阻む砦
 三人がデイドン砦に着いたのは、太陽が真上に近くなる昼前のことだった。石造りの重厚な砦は、外敵を阻むかのように鎮座している。
 この砦は行商人たちが行き交う交易地でもあり、魔物の侵入を阻むための拠点でもある。
 だがそれにしては帝国騎士たちの姿が多いのは、気のせいではない。

「ユーリとエリィを追って来た騎士でしょうか?」

「少なくても先回りしてたってことはないと思う。帝都から来る旅人を見てる訳でもなさそうだし」

 騎士たちがエリシアたちの方を見る様子はない。
 しかし、比較的のどかな砦に似合わないこの物々しい雰囲気は一体何なのだろう。騎士は皆、武器を手に今にも戦いに赴けるのではないのかという格好である。

「ま、あんま目立たないようにな」

「はい。わたしも早くフレンに追い付きたいですから」

 言いつつ物珍しさからか、エステルの視線は騎士団の詰め所やら、砦の見張り台やらに向けられている。砦の周りを見回してから分かったのだが、騎士だけでなく、行商人や旅人の姿も多い。

「エステル、ちょっくら情報収集してくるわ。行くぞ、エリィ」

「え、ちょっ、ユーリ!」

 行商人の集団に夢中になっているエステルを尻目に、ユーリはラピードだけを残し、ひょいと猫のようにエリシアの首根っこを掴んで引きずって行った。
 一人残されたエステルがラピードと顔を見合わせぽつりと一言。

「ユーリ? エリィ? ラピード、二人はどこに行ったんでしょうか?」


「何かあったのかな? 私が来た時はこんな事なかったんだけど……」

「いっちょ聞いてみるか?」

 エリシアが砦を抜けた時は騎士の数も多くなかったし、物々しい雰囲気だったということもない。
 北門前で佇む旅人たちの顔はどこか不安そうだった。行商人の一人に尋ねてみれば、思いも寄らぬ答えが返って来る。

「何でも砦の向こうに魔物が出たらしい。お陰で足止めを食ってるんだ」

 非常によろしくない状況である。エリシアたちとて、ここで足止めを食う訳には行かない。
 追っ手は勿論、フレンがハルルに向かったのは数日前。下手をすれば居ないハルルに可能性もある。刹那、見張り台に設置されている鐘がけたたましい音を響かせた。



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あきゅろす。
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