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の満月が昇る時
首領バルボス
「けど、黒幕は隻眼の大男でしょ? ラゴウとは一致しないよ」

「だとすると、他にも黒幕がいるってことだな。ここに下町の魔核、混ざってねえか?」

 エリシアの考えを知るよしもないカロルは、首を傾げてみせる。ラゴウはどうみても隻眼でも、大男でもない。ユーリは難無くその“答え”にいきついた。これほどまでの魔核を集める理由はわからないが、ラゴウだけが黒幕ではない。
 実行犯は別にいる。それも手慣れていなければ、大量の魔核は手に入れられない。盗まれた下町の魔核も、もしやと思ったのだが……。

「残念だけど、それほど大型の魔核はないわ」

 瞬間、ラピードが真っ先に反応する。沸き上がった殺気。現れたのは数人の男たちだった。一目で傭兵だと分かる服装に短刀。彼らが何者であるかを確信したカロルが叫ぶ。

「こいつら、やっぱり五大ギルドのひとつ、『紅の絆傭兵団』だ」

「どうしてこんな……ラゴウの悪事に加担してるの?」

 前々から気にくわないと思っていたが、ここまで腐っているとは思わなかった。
 そもそもギルドとは本来、帝国の支配に抵抗して作り上げられた組織だ。帝国の法によって守られることはないが、完全に“帝国”の支配から抜け出した者たちの集団でもある。

 基本的にギルドと帝国の仲は良好とは言えない。他のギルドを纏める立場にある五大ギルドが、政府の要人であるラゴウと手を組むというのは考えられないことだ。その時、隻眼の大男が船室から現れる。

「はんっ、ラゴウの腰抜けはこんなガキから逃げてんのか」

 血のように赤い服を身に纏い、巨大な片刃の剣を携えている。筋骨隆々でお世辞にも人受けするような顔ではない。正に悪人面だ。
 片方の瞳には恐らく刃物による裂傷が走り、左腕は生身ではなく、奇妙な形の義手であった。

「……バルボス」

「ん? てめぇ、どっかで見たことあるな」

 自らの名を呼ぶエリシアに、男の視線が彼女に向いた。男は隻眼の大男と聞いた時、頭に浮かんだ人物と同じだった。五大ギルドの一つ、紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)の首領(ボス)、バルボス。

「バ、バルボスって紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)の首領だよ!」

 呟きを聞いたカロルが悲鳴を上げる。そして次の瞬間、バルボスの背後に回ったユーリが首筋に剣を突き付けていた。

「隻眼の大男……あんたか。人使って魔核盗ませてるのは」



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あきゅろす。
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