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の満月が昇る時
ラゴウ邸大惨事
「お前は大人しくしてろって」

「あう?」

 思わぬところからやって来た衝撃にパティは思わず尻餅を付いた。余計なことはしないで貰いたいものだ。変な所を壊されては堪らない。
 一方、カロルは魔導器を操作するために、組上げられた足場を支える柱に狙いを定め、思い切り斧を振り上げる。次いで衝撃。
 その時、カロルの頭上でパネルを操作していたリタの中で何かが切れた。

「あ〜っ!! もう!!」

「うわぁっ! いきなり何すんだよっ!」

 浮かび上がる赤い魔法陣。彼女が得意とする最もポピュラーな魔術、ファイアボール。それにより発生した火球が、カロルの直ぐ近くに着弾する。
 突然飛んで来た炎にカロルは堪らず、後ろに下がるしかなかった。
 一歩間違えば火傷では済まない。リタが手加減していれば別だが、あれは本気だろう。エリシアはリタのファイアボールに巻き込まれないように壁際に移動して、天井の装飾を撃ち落とす。

「うーん……動かない的撃っても練習にもならないかぁ」

 いくら天井が高くて狙いづらい位置にあるとは言え、魔物に比べれば断然当てやすい。が、動いてもいない的を撃ってもちっとも練習にならないのだ。
 普通の人間から見れば、あんな位置の装飾を狙って撃ち落とすのは十分凄い。エリシアにとっては、見て驚くような距離を狙い撃つのは朝飯前である。
 でなければ獅子の娘などやっていられない。父の名に恥じぬよう、鍛錬を欠かさないのだ。

「こんくらいしてやんないと、騎士団が来にくいでしょっ!」

 リタが掲げた手から絶え間なく放たれるファイアボール。部屋に大きな衝撃が走る。無数の火球は壁に激突すると白い壁を黒く焦がした。
 流石にやり過ぎではないだろうか。あまりのリタの勢いに、エステルは壊していい物を探していることさえ忘れていた。

「でも、これはちょっと……」

「なに、悪人にお灸を据えるにはちょうどいいくらいなのじゃ」

 ユーリに大人しくしろと言われたパティは目を閉じ、悟ったように後ろで手を組んだ。
 悪人と言っているが、そもそも彼女はラゴウの所業を知っていたのだろうか。その時、騒ぎを聞きつけたのか、赤い装束を纏った傭兵たちを引き連れたラゴウが姿を現した。

「人の屋敷でなんたる暴挙です! お前たち、報酬に見合った働きをしてもらいますよ。あの者たちを捕らえなさい。ただし、くれぐれもあの女を殺してはなりません!」



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