金の満月が昇る時 強大な魔導器 それはきっと魔導器なのだろう。低い駆動音は魔導器が稼動している証だ。 強大な、天井に届かんばかりに伸びた魔導器は青白い光を放っている。一般に魔導器と呼ばれるものと比べてやけに大きく、全体は洗練されたとは言い難いフォルムを描いていた。 部屋全体を覆うそれが、フレンが言っていた天候を操る魔導器に間違いない。 部屋に入って魔導器を見るなり、リタは真っ先に駆けて行く。 そしてスロープを見つけて、魔導器の正面に立った。かと思うと一行に背を向け、虚空に指を走らせる。現れたのは半透明の制御パネルである。恐ろしい速さで指が動くのをユーリたちは呆然と見守っていた。 「ストリムにレイトス、ロクラーにフレック……複数の魔導器をツギハギにして組み合わせている……この術式なら大気に干渉して天候操れるけど……こんな無茶な使い方して……エフミドの丘のといい、あたしよりも進んでるくせに、魔導器に愛情のカケラもない!」 半ば怒りながら、しかしそれでもパネルを走る指が遅くなることはない。途切れ途切れに聞こえて来るリタの独り言から推測するに、この魔導器は複数の魔導器を組み合わせて作られたらしい。 (でも、リタより進んでるってあれを作った魔導士って誰なんだろう……?) 「これで証拠は確認出来ましたね。リタ、調べるのは後にして……」 「……もうちょっと、もうちょっと調べさせて……」 エステルに言われても、リタは中々離れようとはしない。呆れたユーリが仕方なく声をかけた。このままではリタが納得行くまでここを離れられない。 「あとでフレンにその魔導器まわしてもらえばいいだろ? さっさと有事を始めようぜ」 「そうだよね。有事じゃないとフレンたちは突入出来ないし」 とりあえず派手にぶっこわせばいいだろう。との考え方はエリシア自身は否定するかもしれないが流石、ギルドの人間である。彼等は何にしても豪快なのだ。 そんな彼女にエステルもすっかりその気になったのか、何か壊していいものは……と呟いて辺りを見回している。そして、ここにもその気になった人間が一名。 「よし、何か知らんが、うちも手伝うのじゃ」 パティが楽しそうな顔でどこからか取り出したもの。何と銃である。少女が扱うにしてはやや大きい、ゴツめのものだ。フォルムを見れば分かる。エリシアのような魔導器ではない。 いっちょ前に銃を構えた彼女は、適当な的はないのかとキョロキョロするが、それはあえなくユーリに阻まれることとなった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |