金の満月が昇る時 一目惚れしました 「ふっ……面白いじゃねぇか」 「面白いか? どうじゃ、うちと一緒にやらんか」 パティの言葉を聞いたユーリは、感心するように微笑んだ。言動もそうだが、この少女はユーリを驚かせる何かがあるらしい。そんなユーリを見てパティもにやりと笑う。 一緒にということはパティと共に冒険家をするということだろう。しかも彼もまんざらでもないような感じだ。もしかしなくても受けるのだろうか。固唾を飲んで見守っていると、 「性には合いそうだけど、遠慮しとくわ。そんなに暇じゃないんでな」 「ユーリは冷たいのじゃ。サメの肌より冷たいのじゃ」 「サメの肌……?」 ユーリは肩をすくめただけで、誘いを断わった。パティは残念そうにふうと息を吐く。 何だかほっとしたように息を吐く。その事実に、エリシアは自分では気付かなかった。 そんな事より、もっと分かり易い例えの方がいいのではないだろうか。そもそもサメの肌<ユーリなのだろうか。イマイチ例えが飲み込めない一行などそっちのけで、パティは悪戯っ子のように微笑む。 「でも、そこが素敵なのじゃ」 「素敵か……?」 顔を輝かせるパティを横目に、突っ込みを入れるリタ。つまり、と言うかやはり、パティはユーリのことが好きなのだろう。ここまで来れば誰にだって分かる。現にカロルだって気付いているだろう。 「もしかしてパティってユーリのこと……」 「ひとめぼれなのじゃ」 「ひとめぼれ……」 パティは片目を瞑ってみせる。その後ろではリタが盛大に息を吐いた。 すると今度は、リタの隣にいたエステルがいつも以上にニコニコしている。エリシアが彼女の前で手を振ってみても全く反応がない。 「おーい、エステル?」 話しかけても反応がない。それ所か、まだひとめぼれ、ひとめぼれと繰り返している。本当に大丈夫だろうか。かく言う自分も少なからずショック――とまでは行かないが、を受けていたと言ってもいい。エステルが普通であれば顔に出ていただろう。 「何でもいいけどさっさと行くわよ。一刻の猶予もないんだから」 相変わらずポーカーフェイスのユーリに、我関せずと言ったラピードとカロル。 機嫌よさそうにふんふん鼻歌を歌うパティに、ニコニコ微笑むエステルと、彼女の肩を持って揺さぶるエリシア。まったくと言っていいほど纏まりの無いパーティーを一瞥し、リタは深くため息をついた。駄目だわ、こりゃ、と。 [*前へ][次へ#] [戻る] |