金の満月が昇る時
パティ
「えっと、誰なんです?」
少女に気圧されたように、躊躇いがちに、エステルは面識があるらしいユーリとエリシアを見る。
誰と言われても、自分もユーリも知らない。顔見知りではないし、そもそも一度会ったきりだ。取り敢えず、不思議そうな顔をする彼女にかいつまんで事情を説明した。
「オレはユーリだ。こっちはエリィ。おまえ、名前は?」
「パティなのじゃ」
ユーリが自己紹介をすれば、少女はパティ、と名乗った。 気のせいかもしれないが、少女――パティがユーリを見る目が少し違う気がする。違うといっても、何がどう違うのか、上手く言えない。言うなれば女の勘である。
「パティか。さっき、屋敷の前で会ったよな」
「おお、そうなのじゃ。うちの手のぬくもりを忘れられなくて、追いかけてきたんじゃな」
「どう考えたらその答えに行き着くのか教えて欲しいかも」
ユーリはパティの置き土産である彼女そっくりの人形を掲げる。
瞳を輝かせてユーリを見るパティには呆れるしかない。やはり、エリシアの勘は当たっていたようだ。確か初めて会った時もそんな事を言っていなかったか。
(……まぁ、ユーリ、格好いいし)
「あの、エリィ、どうしたんです? 難しい顔して」
「難しい? 私が?」
怪訝そうな表情のエステルが顔を覗き込んでくる。
難しい顔をしていたのだろうか。難しい顔になる理由なんてない、はず。そんな必要などないはずだ。
そもそも、何に対して怒っていたのだろう。一人青くなったり悩んだりと、忙しいエリシアにエステルは不思議に首を傾けた。
「もしかして自覚なかったんです? 眉間にシワ寄ってましたよ?」
「あ、そう。ありがとう、エステル」
答えたエリシアは上の空というかどこか元気がない。わたし、何か変なこと言ったでしょうか、とエステルはおろおろしていた。もしかして余計な一言だったろうか。
しかし壊滅的に鈍い彼女に分かるはずもなく。一人慌てるエステルと、暗くなっている彼女を尻目にカロルが尋ねる。
「ね、こんな所で何してたの?」
「何って捕まってたんでしょ」
「失敬な。宝を探していたのじゃ」
リタから鋭い指摘が飛ぶ。確かにそうなのだが、それでは流石に身も蓋も無い。捕まっていた、が気に入らなかったのか、パティは心外そうな顔をしていた。言動も妙に年寄り臭い彼女だが、ラゴウの屋敷に侵入した目的もぶっ飛んでいたようである。
まさか宝探しのためにこんな危険を侵すとは誰も思うまい。
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