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の満月が昇る時
オタオタ>自分?
「あんたら、問題多いわね。一体何者よ?」

 リタが呆れ半分にため息をついて首を振る。
 エステルの事情と城での出来事を知らない彼女がそう思うのも無理はない。エリシア自身、ザーフィアスを訪れてから、厄介事が増えたと自覚しているのだ。

「えと、わたしは……」

「ユーリ、出てこ〜い!」

 事情を話すにも話せず、エステルが口ごもった瞬間、タイミングがいいのか今度はボッコスの声まで聞こえて来た。ザーフィアスから始まり、まさかここまで追って来るとは思わなかった。

「そんな話はあとあと」

「リタはあの三人の執念深さを知らないけど、早く逃げないと追い付かれるよ。ザーフィアスから追って来たくらいだしね」

 いざとなれば三人ともボコボコにしてやってもいいが、出来れば関わりたくもない。何かの弾みで正体がばれれば更に最悪である。
 ふざけ半分に言ったエリシアは、僅かに感じた気配に銃に手をかけた。ラピードも長い尾を立てて警戒している。
 しかし次の瞬間、聞こえて来た声は実に間抜けなものだった。勢い良く走り出て来たのは、騎士を引き付けていた(追い掛けられていた)カロルである。他の気配は感じないことから、上手く撒けたらしい。

「うわあああっ! 待って待って! ボクだよ!」

「……なんだ、カロル……びっくりさせないでください」

「そうそう。危うく撃ち抜くところだったかも」

 カロルを見たエステルがほっと胸を撫で下ろす。エリシアはと言うと、笑って腰のホルスターに手を当てた。
 こう見えて抜き撃ちには自信がある。撃ち抜くところだったは流石に冗談だが、お、おっかないよ、と青くなるカロルが面白いので黙っておこう。

「だからあんまエリィを怒らせるなよ? ってことで面倒になる前に、さっさとノール港まで行くぞ」

「別に怒っても銃は乱射しませんから。……全く失礼よ、私は魔物か何かかっての。少なくてもオタオタより無害よ!」

 いくら何でも節操くらいはある。怒っても仲間相手に銃を抜くことはない。
 ちなみにオタオタ、とは蛙の姿をした魔物である。自分で言っておいてなんだが、例えに蛙はないだろう。

「いや、それ例えになってないから!」

「カロル先生に言われずとも分かってるって!」



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