金の満月が昇る時
しつこい誰か
「ふ〜、振り切ったか」」
「はあ……はあ……リタって、もっと考えて行動する人だと思ってました」
エステルもそしてリタも息が上がっている。たいして疲れる距離でもないと思うのだが、旅慣れている自分とお嬢様、魔導士ではきっと体力が違うのだろう。隣のユーリも息一つ乱れていない。
「確かにね。でもリタ魔導器のこととなると無茶しない? シャイコス遺跡でもそうだったし」
小屋にあった白い魔導器にもビクトリアと名前を付けていたし、シャイコス遺跡では人型魔導器に吹き飛ばされたことだってある。今だって魔導器に夢中になって騎士に捕まる寸前だ。
「……あの結界魔導器、完璧おかしかったから、つい……」
「おかしいって、また厄介事か?」
ユーリと一緒にいると、つくづく厄介事に縁があるような気がするのだが、気のせいだろうか。それともユーリではなくエステルなのか。疫病神が憑いている気がしてならない。もしかすると、三人ともなのかもしれないが。
「厄介事なんてかわいい言葉で片付けばいいけど」
「オレの両手は一杯だからその厄介事はよそにやってくれ」
ユーリは間違いなくエステルとエリシアを見た。
両手が一杯? もしかしなくても自分とエステルのことだろうか。迷惑かけてる自覚はあるが、ユーリのお荷物になってるつもりはない。何だか釈然とせずにユーリに詰め寄る。
「私!? 私とエステルなの!?」
「……だから自覚があるなら自重しろっての」
自覚があっても自重出来ないから“こう”なっているのだが。
反論らしい反論も見つからなかった(出来なかった)ので大人しく黙ることにした。視線をユーリから外すのは忘れない。
「……どの道、あんたらには関係ないことよ」
「ユーリ・ローウ〜〜ェル! エリシア・フランベル! どこに逃げよったあっ!」
その時、聞きたくもないルブランの声が耳に入って来る。恐る恐る声のする方を見れば、木々の間からしっかりとルブランの姿が見えた。それを見たリタが茶化すように笑う。
「呼ばれてるわよ? 有名人」
「またかよ。仕事熱心なのも考えもんだな」
ユーリの口からはもう、呆れを通り越してため息しか出ない。エリシアも同感である。
この調子なら、それこそ地獄の底まで追って来るのではないのだろうか。
おまけにルブランだけではなく、アデコールの声までする。いい加減、諦めてくれれば有り難いのだが、あの三人のしつこさを知った今では有り得ないと分かっていた。
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