金の満月が昇る時
個人プレー大好きなんです
案の定、騎士たちは嘘をついたカロルを追い掛け走り出す。まさかこんなに早くばれるとは思っていなかったらしいカロルも慌てて逃げる。
当初の、リタから注意を逸らすという目的は果たせたが、これではカロルと一緒にいた自分たちも気付かれるかもしれない。さりげなく視線を逸らせたが、そうは問屋が卸さない。
「お前たち、さっきのガキと一緒にいたようだが……ん? 確か手配書の……」
カロルと共にいた場面を見ていたのか、一人の騎士がユーリとエリシアの顔を見て唸る。自分たちの手配書は末端の騎士にも回っているらしい。
流石にあの手配書から自分たちの素性が分かるとは思わないが、ここで事を荒げてはもともこもない。エリシアはなるべく自然に見えるように振る舞った。
「手配書? 何のことですか? 私たち、アスピオから来たのでその辺りの事情はちょっと……」
最後は困ったような笑顔を浮かべれば完璧だ。そう思った直後、ユーリがいないことに気づく。居るのは演技に感心しているエステルだけだ。
ユーリはと言えば、リタを捕まえようとしていた騎士を手刀で昏倒させると、他の人間には聞こえないよう耳元で呟いた。今だ、と。逃げたリタを追おうともう一人の騎士が駆け出すが、そうはさせまいとラピードが背後から襲い掛かる。
「あ、こら、待て!」
「仕方ない、か。みんなホントに個人プレー大好きなんだから」
自分が頑張った意味が全くない気がするが、仕方ない。槍を構える騎士に、覚悟を決めると、一瞬でホルスターから銃を抜き、騎士に向けて引き金を引いた。銃口から溢れる淡い光――エアルが凝縮されたものである。威力は落としているので直撃してもせいぜい気絶がいいところだ。
現に地面に叩きつけられた騎士はぴくりとも動かない。そしてユーリとリタの姿も既になかった。律儀に謝るエステルの手を引いてエリシアも二人と同じ獣道に足を踏み入れた。
木々が生い茂る獣道をしばらく走った後、一行は足を止めた。辺りを見回しても人の気配はない。カロルに気を取られてくれたお陰でもあるが。
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