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の満月が昇る時
破壊された結界魔導器
 リタは結界魔導器が白煙を上げる場所に近付くと魔導器を見下ろした。武器による損傷だろうか。魔導器には破壊された跡がある。
 普段ならいないはずの騎士の姿もあることを考えると、何者かの手により破壊されたと考えて間違いない。結界魔導器と何かを見間違うことなど絶対にないだろう。
 ならば結界魔導器を破壊した人物は、これが結界魔導器だと知って破壊したのだ。

「こらこら、部外者は立ち入り禁止だよ!」

 すると魔導器を調べていた男――恐らくは魔導士だろうが、リタを見つけて声を張り上げる。
 しかし、彼女もそれを予想していたようで、無造作に懐からアスピオの魔導士であることの証、紋章を取り出して男に突き付けた。

「帝国魔導器研究所のリタ・モルディオよ。通してもらうから」

「アスピオの魔導士の方でしたか! し、失礼しました!」

 奇抜な格好をした少女がアスピオの魔導士だと知った男の態度が文字通り一変する。
 だが彼女は全く彼に興味を持たず、そのまま魔導器を詳しく調べ始めた。男が勝手をされては困ります、上に話をと言ってはいるが、耳にも入ってないらしい。そんなリタを見ていたユーリが一言呟く。

「あの強引さ、オレもわけてもらいたいね」

「ユーリには必要ないかと、思うんですけど……」

「むしろあったら困るってば。ストッパー役がいなくなっちゃうから」

「……エリィとエステルはもう少し自重しろっての」

 突っ走るリタとエステルにエリシアもまあ、そうだろう。カロルもストッパーにはならないだろうし……。その前に、そもそもこんな事、真面目に議論しているのが馬鹿らしい。
 ユーリからは呆れた視線を向けられる。自重出来るならとっくの昔にしているのだ。視線を逸らして向こう側を見ると、なんとカロルが息を切らして駆けてくるではないか。

「みんな、聞いて! それが一瞬だったらしいよ! 槍でガツン! 魔導器ドカンで! 空にピューって飛んで行ってね!」

 休む間もなくまくし立てるカロルに、エリシアたちは困惑していた。
 興奮しているのか焦っているのか、カロルが言おうとしている事がいまいち分からない。魔導器を槍で壊した犯人が空に逃げた、とでも言いたいのか。
 伺うように隣を見れば、ユーリもエステルも何やら訳が分からないと言った様子である。

「……誰が何をどうしたって?」

「竜に乗ったやつが! 結界魔導器を槍で! 壊して飛び去ったんだってさ!」

 カロルの口から出た竜と言う単語に首を傾げるしかない。竜と言えば勿論、人に害をなす“魔物”だ。そんな竜が人を乗せるなどと聞いたことはない。



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あきゅろす。
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