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の満月が昇る時
クッキングタイム
「ねえ、みんな……お腹空いたよ」

 カロルがお腹を押さえて言い出したのは、ハルルを出てしばらく経ってからだ。ここまで遠くにくれば、流石にもう大丈夫だろうし、カロルだけでなく皆、アスピオを出てから何も口にしていない。
 ラピードも彼に同意するようにきゅーん、と一声鳴いた。
 エフミドの丘に入る前に腹ごしらえもいいだろう。食べられる内に食べておかなければ。何よりエリシア自身も既に空腹を感じ初めていた。

「そうですね。わたしももう……」

「魔物もいないみたいだし、一旦休憩でいいんじゃない?」

「そうだな。休憩にするか」

「リタは火をお願い」

 休憩場所は、街道から少し離れたところに決めた。
 ユーリとカロルがまきを集め、エリシアとエステル、リタが食事の用意に取り掛かる。ラピードは周囲の見張り役だ。
 たかが火と侮るなかれ、火を起こすのは意外と難しい。旅慣れていても結構時間が掛かるのだ。

「しょ、しょうがないわね。揺らめく焔、猛追。ファイアボール」

 魔術で火をつけるにも威力の調節が必須な訳だが、天才魔導士のリタにならおてのものだろう。
 素早く印を切った直後、魔術が発動する。掲げた手の先、玉が生み出され、積み上げられたまきは瞬時に燃え上がった。流石はリタ、火の調節は文句のつけ所がない。完璧だ。
 その間に二人で切り分けて置いた具材を火が通るまできちんと鍋で炒める。鍋はカロルの大きな鞄の中にあった。ちなみに折り畳み式で、かさ張らない優れものだ。

「え、えっと、エリィ、次はどうしましょう?」

 振り向けばエステルが鍋の前でオロオロしていた。彼女もやっと危なげなく包丁を扱えるようになったのだが、城の生活が中々抜けきらないらしい。
 何たって以前は、切ってもいない野菜をそのまま炒めようとしたのだから。
 うん、やる気になってくれるのは嬉しいけど、実行する前に聞いてね、と口を酸っぱくして言い含めたお陰で、やっと聞いてくれるようになったのだ。荷物から缶詰を取り出してエステルに手渡す。

「次は買っておいたトマトソースを入れて煮込んで」

「はい」

 せめて隣に誰かがついていれば、最悪の事態は避けられるだろうから。
 数十分後、鍋の中で煮込まれているのはミネストローネである。父と自分の二人分か大人数なギルドの皆の分という、極端な量しか作ったことがなかったため、少々加減が分からずに苦戦した。
 少なくても見た目と香りには何ら問題ない。ミネストローネだとラピードは食べれないため、彼の皿にはラピード専用の犬ご飯が盛り付けられている。
 見張りを頑張ってもらったこともあり、いつもより心持ち豪華だ。



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あきゅろす。
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