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君に届く歌
A
「それじゃあ、僕の後に続いてね」

いつの間にか教室に着いたらしい。気分を落ち着けるように深呼吸をして、アーヴィンの後に続いて教室に入る。
その瞬間、値踏みするような、何ともいえない視線に晒された。
居心地が悪い事この上ないが、ここは我慢。

「ではHRを始めます。皆知ってるとは思うけど、今日からクラスに一人、仲間が増えます。はい、自己紹介して」

アーヴィンに促され、ルカは教壇に立った。正に動物園にいる動物になった気分である。

「はい。皆さん、はじめまして。ルカといいます。な、仲良くしてください」

自分でも多少引き攣った気がするが、ルカがにこりと笑えば教室内の空気が一気に変わる。
突然の変化に驚きながらもルカはとりあえず微笑んだ。

「席はそうだね……シルバーレイ君の隣が空いているみたいだね」

アーヴィンが視線を向けた先、そこには信じられないくらい美しい青年がいた。
絹の様な光沢を放つ銀髪に金色の瞳、どんな美女よりも迫力がある。

注目が集まる中、ルカは銀髪の青年の隣、空いている席に腰掛ける。すると彼がルカのほうを見た。

「アルトゥール=レインセル=シルバーレイだ」

名前を聞いた瞬間、一気に血の気がひいた。シルバーレイは世界を裏から操る白銀の一族。
それも間名を持つということは、シルバーレイ家の跡取りということである。

「どうした?」

「なんでもないよ。よろしくね」

訝しげに首を傾げる青年にルカは何とか笑みを返した。
それにこの教室にいるのは彼だけではない。見た所、紅蓮に暁天の人間もいる。

本当にこんな所に押し込んだ父を呪った。だから嫌だと言ったのに。
正体がばれれば袋叩きにされそうである。気が重いことこの上ない。

考えれば考えるほど息が詰まるような感じがして、ルカは教科書に目を落とした。



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