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ルカディア
強すぎる力
「この子が兵器……?」

 アルの説明を聞き、再び少年を見る。とてもそんな風には見えなかった。
 少年は人と竜が融合した異形ともいえる身体であったが、ルカは不思議と恐怖は感じなかった。寧ろ懐かしい気さえする。

 するとそれまで動かなかった瞼が僅か震え、美しい瑠璃色の両眼が露になった。ただ彼の意識は未だ夢うつつをさまよっているのか焦点は合っていない。

「生きてるのか?」

『ああ。長い間封印されていたようだが……これでは時間の問題だろうな』

 人造竜兵は自由に姿を変えられるが、半身が竜化しているということはつまり、限界が近いということだ。千年以上も封印されていたのだから当然だが、いつ機能を停止していてもおかしくない。
 その時、少年を戒めていた魔水晶に蜘蛛の巣状に亀裂が入る。

『だ……れ? 僕の声を……聞いてくれたひと?』

「そうだよ。待ってて。直ぐに出してあげるから。……でも、どうやれば」

 か細い声で少年は言う。虚ろであった瑠璃色の瞳にも生気が戻っていた。
 砕こうにも亀裂が入ったとは言え、魔水晶の強度は高く、生半可な力では到底壊せない。思案するルカに定位置に戻ったアルが口を開いた。

『お前が本当にこの人造竜兵(ドラグーン)と波長が合うというのなら触れるだけでいい』

「う、うん。やってみるよ」

 頷いて、自分より僅かに高い位置にある魔水晶に手を触れる。するとどうだろう。ルカが触れた先から何かが染み渡るように徐々に亀裂が増えて行く。そしてそれが水晶全体に及んだ後、魔水晶は音を立てて砕け散った。

 ルカは慌てて、支えを失った少年の身体を受け止める。その体は信じられないくらいに冷たい。
 
 血が通っている生物にあるはずの暖かさは一片もなく、本当に生きているのかと疑いたいくらいだ。
 するとどうしたのだろう。少年の様子がおかしい。自分で自分を抱きしめるように小刻みに震えている。

「どうしたの!?」

『力の暴走だ! ルカ、意識を集中して同調しろ!! でなければこの人造竜兵は自らの力に耐え切れずに死ぬぞ』

 本来、人造竜兵は声を聞く者の力を借りて、その身に眠る強大な力を御する。

 だが千年以上も封印されていた力は、戒めから解き放たれた途端に暴走を始めたのだ。少年を助けたくば意識を同調させ、力を制御してやる他ない。

 意識を集中しろと言われても、そんなに簡単に出来るはずがない。
 だが出来なければこの子は死ぬ。だからルカは少年を抱きしめて必死に願った。助けたいと。



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あきゅろす。
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