アルカディア
さらけ出された嘆き
何も見えない。明るいようでいて暗い牢獄に囚われていた。自分の意思では一切自由にならない体。
僕は何のために生まれて来たの?
いつかそう問うたことがあった。自分を生み出した人の一人はその問いにこう答えたのだった。
『お前に生まれた意味は必要か? 存在意義がなければ生きられないのか?』
分からない。だって自分の生まれた理由を知りたいと思うのは当たり前でしょう?
ある時誰かが言った。お前は竜を殺すためだけに作られたニセモノだと。
嫌だ!! 僕は誰も殺したくなんてない!! そう言って全てを拒絶した。
だけど運命はそんな僕を許してはくれなかった。……沢山、本当に沢山殺した。自分の手が誰の血か分からない程に赤く、黒く染まるほど。
もう殺したくないのに!! お願いだから誰か僕を|助けて(ころして)……。殺して!!
『どうした?』
「また声が……聞こえた」
遺跡で聞いた時よりはっきりとルカの元に届いた。声と共に伝わって来る悲痛な叫び、さらけ出された嘆き。
(何故、どうして泣いているの? 何がそんなに哀しいの?)
まるで一人置き去りにされた子供のように声の主は泣いていた。君はどこにいるの……。そう強く想った時だった。
『僕は……ここにいるよ』
それまで一方的だった声が初めてルカに応えた。
だがそれも一瞬の事で直ぐ声は聞こえなくなる。しかしルカには十分だった。昔誰かが言っていた。ドラグナー、声を聞く者。その力は一種の精神感応ではないかと。
「アル、イクセ、俺について来て!!」
ルカは叫ぶと、何かに導かれるようにして走り出した。目指す場所が明確にあるのかその足取りには一切の迷いもない。
ルカが誰の声を聞いているのか、イクセもアルも分からなかった。
だがルカが言うのなら真実に違いないのだろう。だから意外にお人よしな青年と少年にだけは甘い竜は頷き合い、共にルカの後を追った。
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