アルカディア
隠された楽園
かつて人竜大戦の最中、人と竜が手を携えて暮らす都が存在した。
名を空中都市エリシオン。エリシオンとは古い言葉で楽園を意味する言葉である。正に理想郷に相応しいその都市は誰にも邪魔されることなく、ひっそりと空に浮かんでいた。
エリシオンに暮らす人々は皆、竜と心を通わせる、本当の意味の声を聞くであったと言われている。
本来、声を聞く者とは、竜と心を通わせる者との意味があったらしい。
しかし大戦以降、声を聞く者へと意味を変えたと伝えられている。
だが運命はそんな彼等を見過ごしてはくれなかった。竜たちに都市の存在を知られたのだ。やがて人々は都市から去ることを余儀なくされる。
都市を降りた人々は散り散りとなり、世界各地に散って行った。
主を失った空中都市は千年以上の時が流れた今もまだ、空をさまよい続けているという。――隠された楽園、エリシオン、より。
“それ”は覚めることない夢の中でまどろんでいた。ただ一人、帰ることのない誰かを待ち続けるために在りし日の夢を見ながら。
長い長い時を眠り続けていた。このまま目覚めることなく、揺り篭の中で眠り続けるはずだった。だが、
『誰か……助けて……』
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