アルカディア
アルの悩み
「ね、二人とも。目的地はどこにする?」
「まあ、俺はお前に付いてくから気にするな」
ルカの声に答えたのはイクセ。いつもなら真っ先に反応するはずのアルは、考え込むように虚空を見つめている。
普通の人間には竜の表情など分からないだろう。だがルカには分かった。
今のアルは悩んでいる。間違いなく。
アルが悩みや迷いといった感情を表に出すことは滅多にない。というか見たことがなかった。ルカの前でも、だ。
そんなアルが言うことを躊躇っている。何年も一緒にいるのに直ぐに気付けなかったことが悔やしかった。アルにとって自分(ルカ)は何なのだろう。親友であり、時には父や兄であった彼。
「おし、ちょっと場所変えるか」
気を利かせて言ったのはイクセである。彼はルカの頭を軽く叩いた後、安心させるように髪を撫でる。確かにここは騒がしいし、場所を変えた方がいい。
ルカはアーヴィンとリリスに再会の約束をして、イクセと共にギルドを出た。
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