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ルカディア
知りたいと思う感情
「ルカちゃんにはこれが一番似合うと思ったの。これは絶対に無くさないようにしてね。一応ギルドからの支給品だけど紛失した場合、自費だから」

 冒険者となって初めて支給される石はライセンス代わりとなるため、装飾具など直ぐ見せられる物を選ぶ冒険者も多い。
 イクセも剣帯に付けているし、首飾りや腕輪といった装飾品に加工する者たちもいた。

 リリスによると紛失した場合、自費らしい。聞けば飛び上がるほど高いという。これは嵌められている石が特殊なせいでもあるが、正当な理由があれば紛失、または破損しても支給される。

「分かりました。気をつけます」

 リリスから耳飾りを受けとって付けると、ルカは改めて自分が冒険者になったのだと実感した。
 一人前には程遠いだろうが、それでも今はこれでいいと思う。

 例え一歩ずつだとしても自分は確かに進んでいるのだ。そう考えると嬉しさが込み上げてくる。シャーレンのことを考えると胸は痛んだが、今は納得して前に進むしかないのだろう。

「そういえば、ルカ君はこれからどうするんだ? イクセはどうせ君に付いて行くんだろう」

 アーヴィン曰くイクセは元から一つの街に長居するタイプではないし、ルカを気に入っているらしい。彼とは結構な付き合いであるアーヴィンにはイクセがどうするのか、何となく理解出来ていたのだ。

「世界を見て回ろうと思います。俺、今まで故郷の街――エランディアから出たことがなかったので」

「だからあの時も道が分からなかったわけか。君がエランディア出身なら納得したよ」

 成人を迎えないと街を出られないというしきたりは、大陸中探してもエランディアくらいなものだ。こうして街の外に出て分かったが、外の世界は本当に広い。
 見るもの全てが新鮮で、自分の知らないことだらけだ。

 知らないものに触れるのは胸が躍る。無論、目に見える全てが綺麗だとは限らない。むしろ汚れている部分の方が多いかもしれない。
 世界が決して綺麗なだけではないことはルカも分かっていた。

 まだまだ一人前とは言えないだろうが、何も知らない子供ではないのだ。
 この先、楽しいことばかりではなく、辛いこともあるだろう。シャーレンの時のように、誰かの命を絶たなければならない場面に出くわさないとも限らない。
 
 それでもルカは知りたいと思う。まだ見ぬ世界を、これから出会うであろう多くの人々を。




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