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ルカディア
年相応
 武器屋に一歩踏み入れたルカは思わず感嘆の声を上げた。故郷の街とは比べ物にならない品揃えだったからである。
 剣だけでも多くの種類があり、兵士が好んで使う、炎のように波打つ刀身を持つフランベルジェや冒険者の間ではお馴染みのバスタードソードなどの有名所。

 使い手の少ない、曲線を描く細身の刀剣シャムシールや、その重量からあまり実用的とは言いづらいツーハンデッドソードまで様々である。
 それらを横目にルカは短剣やレイピアなどが陳列されている一角に向かった。

 本来短剣は投擲に向いているとは言えない。投げるよりも直接斬り付けた方が良いからだ。
 射程自体も長いとはいえないし、急所に当たらなければ決定的な傷にもならない。ルカがあえてスローナイフを使うのは馴染みの武器だったからといえる。

「んー、どれにしようかな」

「これなんかどうだ?」

 イクセが手に取ったのは、黒い柄に少し長めの刀身。シンプルな作りのナイフ。ルカはそれを受けとって軽く振る。持ちやすさは勿論、値段も手頃だ。銀の刃には一点の曇もない。
 ものの数秒で購入を決めたルカは店長の元へと向かう。イクセは会計を待つ間、アルを頭に乗せて陳列された武器たちを眺めていた。

「重いんだが……」

『知らんな』

 イクセの抗議も当然、アルには黙殺される。将来禿げたらどうしてくれるんだと言いたいが、言えるはずもなく。
 こうして見て回っても、流石に刀は置いていないようだ。

 刀は所謂“斬る”ことに特化した剣である。刀身は合金で作られていることもあり、最も強靭な刃をもっていると言えるだろう。
 そうこうしている内に会計を終えたルカが戻って来た。何やら晴々しい顔をしているが……。
 イクセの頭に乗っていたアルが、定位置であるルカの肩に乗る。

「じゃーん。値引きしてもらったよ」

 得意そうに語るルカに思わず店長の方を見ると、疲れたような、だがこちらもどこか晴々しい表情を浮かべていた。
 どれだけ値引きして貰ったのか分からないが、ルカが満足したことは確かだ。

「一体何したんだ?」

「えっへへ、秘密」

 イクセが尋ねてもルカは秘密と笑うばかり。余程嬉しかったのだろう。見て見て、と肩に乗るアルに見せている。
 笑うルカは十五歳の少年そのもので、とても竜を倒すほどの魔奏士には見えなかった。




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あきゅろす。
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