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ルカディア
旅は道連れ
 ルカは結局、イクセの隣に座って朝食を取ることになった。今日のモーニングセットは小麦色に焼き上がったトースト、コーヒー(イクセはブラック、ルカは砂糖とミルク入り)にレタスとトマトのサラダ。
 たっぷりとイチゴジャムを塗ったトーストをかじりながらルカは聞いた。

「ねえ、本当に一緒に来るつもりなの?」

 朝食が運ばれて来る間にイクセから聞かされた驚きの提案。アルは相変わらずしれっとしていたが、ルカは約一分無言で目を白黒させていた。イクセはルカについて来るという。
 そもそも二つ名で呼ばれる彼が、自分の旅に同行するメリットがないではないか。

「駄目か?」

「そうじゃないけど、アーヴィンさんからイクセはあんまり人と組まないって聞いたから」

 駄目か、と聞かれれば駄目なはずがない。イクセは街を出でから初めて気負わずに話せる相手だし、何より一緒に居て楽しい。
 しかしイクセほどの冒険者となれば引く手数多のはず。それなのに自分と共に来ていいのだろうかと。

「まあ、俺は気に入った奴としか組まないからな。お前が気に入った。それじゃ不満か?」

 そう言って黒呀と謳われる青年は、憎らしいくらいに惚れ惚れする笑みを見せる。
 そこまで言われれば、嫌とは言えないではないか。ルカは困ったような、苦笑めいたような表情を作った。
 そんな二人を尻目に、アルは我関せずといった様子でイチゴジャムを食べている。ルカ以外にはとことん関心がない竜である。

「ううん。じゃあ改めてよろしく、イクセ」

 ルカはイクセに向かって右手を差し出す。イクセもルカの手を取り、しっかりと握り締めた。
 そしてその二人の手の上に銀色の竜がぽすっ、と乗り上げる。

 どうやら自分を忘れるなとの無言の抗議らしい。さっきは全く干渉しなかったくせに現金な者であるとはイクセの談。
 イクセは仕方なくもう一方の手、左手でアルの頭を撫でてやった。彼が不服そうにイクセの手を押しのけたのは、それから五秒後のことである。




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