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ルカディア
確かな絆
「アル!? ミラ!? どうしたの!?」

 二人の様子がおかしい。胸を掴み、苦しげに呻いている。ルカは何ともないのに、見えない何かがアルとミラを苦しめていた。
 様子がおかしいのは二人だけではない。リオンやアティ、ウィスタリアとゼフィの声まで聞こえる。始竜ではない竜たちもだ。皆、苦悶の声を漏らしているではないか。ミラもどうにか幻術を維持しているようだが、それも時間の問題。竜たちを苦しめている力の正体は何だ。魔法陣と魔水晶が関係しているのはまず間違いないだろうが、それだけでは何も分からなかった。

「竜……封じの結界、か……」

「竜封じの結界?」

 アルの顔は蒼白と言っても過言ではなく、息も絶え絶えといった有様である。直ぐさま駆け寄るが、何とかしたくても、どうすればいいか分からない。
 竜たちの声が頭に響いて何も考えられなかった。集中し、どうにか“彼ら”の声を遮断してアルに尋ねる。これが何か分からなければ、対処のしようがないからだ。

「ああ……。滅竜歌と同じく、千年前に葬られた呪法。あまりにリスクが高すぎたために……使われることのなかった結界だ。まさか私たちの自由すら……奪うとはな。魔水晶で結界の力を大幅に増幅しているのだろう」

 千年前、人竜大戦時。人は強大な竜に対抗するため、様々な手段を講じた。人造竜兵(ドラグーン)や竜封じの結界もその一つである。
 竜封じの結界はあくまで“封じ”の結界。竜を拘束することは出来ても、傷付けることは出来ない。そのため、人竜大戦でも殆ど使われることがなかった。しかも封じるだけの結界でも、竜は人間より遥かに強い力を持つ存在だ。
 人間が発動させようとすれば、術者は一人では到底足りない上に、下手をすれば竜に力負けしてしまう。
 本来なら竜どころかアルたちを戒めるほどの力もないが、囲むようにして浮かぶ数百もの魔水晶、その力によってヴァイスファイトは己の力を増幅したのである。

「破らなきゃ。でもどうやって?」

 ヴァイスファイトの術を正面から破れるのはアルたち始竜だけ。人の力ではとても無理だ。いくら人の肉体に宿っているとしても、その体もまた魔水晶を移植されている。結界を破るには、それ以上の力をもってしなければならない。人の身で正面から竜の術を破る術は無いに等しいし、だからと言って他に方法はないのだ。アルやミラの力に頼るのが一番なのだろうが、今の彼らに結界を打ち破るほどの力は出せないだろう。

「ルカ、私と共に歌って……くれ。今の私は十分な……力を発揮出来ない。だがお前となら……」

「うん。アルと一緒なら何だって出来る」

 一度は切れ、千々になった絆だけど、確かな証は今ここにある。アルは美しい顔を苦痛に歪めながらも、鉛のように重い身体を引きずって、ルカの隣に並んだ。迷いなど一切ない。頷き合い、手を取り合った二人は想いを歌に乗せる。




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