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ルカディア
冒険者登録
「ほら皆、いい加減にしてさっさと片付けろ!」

 お、アーヴィン帰ってきたのか、などと今正に気付いた者や、右腕に巻かれた包帯を見て、怪我してるじゃねぇかよ、と言う者もいる。
 男たちは渋々ながら倒れたテーブルと椅子をもとに戻し、散らばっていたゴミや料理を片付け始めた。

「おかえりなさい、アーヴィン。怪我してるみたいだけど大丈夫? それとこの坊やは?」

 カウンター越しに声を掛けて来たのは、燃え上がる炎を思わせる赤毛の女性。年の頃は恐らく二十代前半ほどだ。
 胸元が大きく空き、大胆にスリットが入った真紅の服に、幾重も付けた金の腕輪が甲高い音を立てる。一見すると踊り子にも見える服装だが、カウンターにいるということは、受付なのだろう。

「ただいま、リリス。一週間は重い物を持つなって。あぁ、この子はルカ。危ない所を助けてもらってね」

 アーヴィンは包帯が巻かれた腕を女性に見せると、後ろのルカたちを見やる。紹介されたルカは軽く会釈を返すと、リリスと呼ばれた女性はルカを見て淡く微笑した。

「そう、坊やがあの歌をね。私はリリス。彼と同じくギルドの受け付けよ」

「ごめん。本来の目的を忘れてた。登録なんだけど、まずはこの書類に記入してもらえるかな?」

 アーヴィンがカウンターの奥から取り出したのは一枚の用紙。冒険者の登録と言っても簡単な書類審査とギルドから提示された依頼で判断される。
 ルカは紙とペンを受け取り、カウンターに座った。
 ルカが書類を埋める間、アルは邪魔をしないように肩から下りてテーブルに移動する。

「あら貴方、竜よね? じゃあルカちゃんは声を聞く者(ドラグナー)なのかしら?」

『その通りだ。だがお主もそうであろう?』

「私は力が弱いから駄目よ。ちゃんと聞こえない時もあるし」

 あら、とリリスはルカの肩に乗ったアルを見た。ゆらゆらと尻尾を振りながら問うアルに、リリスは首を横に振る。
 一口に声を聞く者と言っても、人によって力のムラがあるのだ。リリスのように簡単な意志疎通しか出来ない者もいれば、ルカのように竜と心を通わせる者もいる。




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あきゅろす。
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