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ルカディア
分かっているから
「取り入ったって、もしかして……」

 考えたくはないが、これまでの話を合わせると答えは自ずと出る。ルカが答えを求めるようにアルを見れば彼は小さく頷き、リオンに至っては深いため息をついた。
 事情を知らないリードは首を傾げるしかない。意図的に流された噂、アルたちが感じた力。

「だろうね。本当に何を考えているのか」

「……もう分からねえよ」

 何を考えているのか分からない、琥珀色の目を伏せ、美しい顔を歪ませるアティにリオンは吐き捨てるように呟いた。ヴァイスファイト。かつてなら理解していた存在。
 だがそれはもう、遥か昔のこと。リオンの側から去ってしまったもの。『友』だと思っていたのは自分だけなのか。

 リオンにはもうヴァイスファイトの心が分からない。分かりたくも無い。変わってしまった彼の心なんて。アルも、アティだって同胞を殺したいとは思わない。それしか方法がないから、ヴァイスファイトをとめられないから。

 自分達の感傷で世界を危険に晒す事は許されないのだ。心を殺せと言い聞かせたはずなのに胸が痛い。アルもリオンもアティもやるべきことはもう分かっているから。

「あの、ありがとう。リード」

「気にするなよ。仕事でもあるし。何か知らないけど、役に立てたなら情報屋の本望ってな」

「サンキュ。ほら、取っとけ。小夜啼鳥(ナイチンゲール)」

 にっこりと笑うルカに、リードもつられるように笑った。純粋に礼を言われることが少ないのか、照れているらしい。視線を逸らし、頬をかいているのだから間違いないだろう。

 イクセは手に持った何かを投げた。陽光を反射して煌くそれは綺麗に放物線を描き、リードの手の中に納まる。それは金貨、情報料だ。

「まいどー。……気をつけろよ、《黒呀》。竜狩りなんてろくなことじゃねえ。じゃ、な。またのご利用を」

 今までは年相応の笑顔を見せていたリードの表情が変わる。それは紛れも無く小夜啼鳥(ナイチンゲール)の名で呼ばれる情報屋の顔だった。彼も情報屋という職業柄、危険を感じているのかもしれない。

 しかし次の瞬間には人好きのする笑みに戻っている。思わず聞き入ってしまう声で別れの言葉を告げた後、リードは冒険者ギルドを後にした。

「アル」

『ああ。ゲイルたちに連絡を取って、行くぞ。エスメラスへ』

 ルカは肩に乗る相棒に声を掛ける。そこできっと『彼』が待っているのだろう。リオンのかつての親友にして同胞、暁闇の君――ヴァイスファイト=グラフ=ノスフェラートが。



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あきゅろす。
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