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ルカディア
始竜集結
 アルとリオンは言った。今、目覚めている始竜は自分達を含め、白銀の君アルトゥール、紅蓮の君ヴァーミリオン、蒼穹の君ウィスタリア、風天の君シルフィード、豊穣の君イスラフィールだと。
 シルフィードとウィスタリア、目覚めたばかりのイスラフィールは顔を出してくれるらしい。

 ルカたちはアルが作り出した不思議な空間にいた。ウィスタリアやリオンが作り出した異空間と同じ、銀の光を放つ魔水晶群がその証である。理由は勿論、他の始竜を待つため。

 一行が滞在していたルシタニアでも構わないのだが、流石に始竜たちは目立ち過ぎる。アルやリオン、ウィスタリアと今までルカが目にした始竜はこの世のものではないくらい美しかった。
 街中でそんな人間がいれば流石に目立つからである。他の始竜を待つ間、リオンが感慨深げに呟いた。

「随分久しぶりじゃないか? 始竜がここまで集まるなんて」

「……そうだな。千年前の人竜大戦でさえ私と紅蓮、そして先代の蒼穹だけだった」

 そんな彼にアルも同意する。始竜がここまで一箇所に集まることは珍しい。休眠状態にある紫電の君エクレールと転生に入った夢幻の君が居れば、全員揃ったことだろう。

 千年前の人竜大戦時にヴァイスファイトはアルとリオン、先代の蒼穹の君に滅ぼされた。
 だがその一件で先代の蒼穹の君は死を迎え、ウィスタリアが生まれたのだ。

「そうなんだ……。でも始竜の皆って人の姿は凄く綺麗だよね」

 直視するのも恥ずかしいというか、遠慮してしまう。アル、リオン、ウィスタリア。ルカが出会った始竜は皆、美の方向は違うが例外なく美しかった。

「ん、まあ、そう『造られた』からな」

「え?」

「……来たな。豊穣か」

 造られた、と口にしたリオンはどこか寂しげに見える。彼らしくない声色にルカが首を傾げ、その理由を尋ねる前にアルが口を開いた。

 アルが視線を向けた先、銀色の魔水晶の影から現れたのは十六、七歳ほどの人物。金を散らした琥珀の瞳に、やや癖のある銀に近い黄金の髪は腰よりも少し長いだろう。

 一見したところ、性別は分からない。
 中性的で整った美貌、女性のように柔らかな肢体。和と洋が混在した不思議な服を纏っている。その人物はアルとリオンに目を向けると、ふわりと微笑み、耳朶に響く柔らかな声音で彼、もしくは彼女は言った。

「うん、久しぶり。ルゥ、ミリィ」



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