アルカディア
大はしゃぎなルーア
抜けるように白い肌はこのグラディウスの地では珍しく、余計に周りからの注目を集めている。うっすらと化粧を施されたルカはリリスが舞姫であるように、歌姫そのものであった。
リリス同様、薄い布で作られた青い衣装は露出度が高く、腕は剥き出しで透き通った白のストールを巻いている。
髪にはルカの瞳と同じ茜色の宝石の髪飾りに、腕と首にはリリスとお揃いの銀輪を嵌めていた。胸は勿論、というか言うまでもなく詰め物だ。
腰近くある長い髪は先になるにつれて、鮮やかな青から深い青のグラデーションになっている。
これはルカの髪と同色の付け毛が見つからなかったためだが、リリスは満足していた。いつもと同じなのは冒険者を示す耳飾りだけで、それ以外はどこからどう見ても少女である。
「リリスさん!」
「まあ、いいじゃない。どうせ嫌でも直ぐに見られるんだし。見られてなんぼよ。こんなもの」
「そうよ、とっても可愛いから大丈夫よ」
笑うリリスとアイリーンは流石親子、そっくりだ。とは言え、可愛いから大丈夫とはどんな理論なのだろう。あのアルでさえ苦笑している。
だが今日までの経験で何を言っても無駄だとルカは理解しているので、何も言わずにがっくりと肩を落とした。
「んー……そうね。ルカちゃんの出番までまだ時間あるし、良かったら回って来たらどうかしら?」
神祈祭のメインは歌姫の歌と舞踏剣であるが、他の地域では見かけない露店や見世物もある。
ルカがエランディア出身だと聞いたアイリーンのささやかな気遣いだ。すると真っ先に反応したのはルカではなく、何とルーアだった。
「行こうよ、ルカ兄!」
「え、あ、ちょっと! ルーアってば……ていうかこの格好でルカ兄って呼ばれても困るんだけど……」
一応は女の格好をしているのだから、ルーアの発言は色々と誤解を招きかねない。
しかし今の彼にはルカの制止の声もまるで耳に入っていないらしい。ルカの手を取って元気よく駆け出していく。
イクセもアルも予想外のルーアのはしゃぎように、ぽかんと口を開けて一連の出来事を見つめていた。
「お、俺達も行くか」
「ああ……そうだな」
アルならこの人混みの中でも二人を見失うことはないが、このままルーアを放っておくのは不味い気がする。何せ人が多いし、ルカは『歌姫』なのだ。
アルとイクセは頷き合い、人混みを掻き分けてルカとルーアを追った。
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